2023年4月21日金曜日

コゴミを食べる

                      
 コゴミ(クサソテツ)は毎年、大型連休のころ、夏井川渓谷の隠居の近くで採る。20個も摘めば十分だ。

 令和元年東日本台風の大水で自生地が冠水し、土砂に埋まった。それが影響してか、春の芽生えがいまひとつ冴えない。

 そばに小流れがある。石垣のへりに沿ってしみ出た水が集まり、通路の暗きょを直角に曲がって川へ流れ落ちる。その出口部分、小さな湿地にコゴミが生えている。

暗きょの先の小流れは、下流側から上流側へとヨシが侵略を続けている。それだけではない。石垣のへりがイノシシによるラッセルで埋まったこともあって、空き地に新しい小流れができた。

 それでも春がきて、対岸の斜面にアカヤシオ(岩ツツジ)が咲き、木の芽が吹き始めると、小流れをチェックする。

 今年(2023年)は春が早いので、4月9日に確かめた。コゴミの姿はなかった。今年はあきらめるしかないか――。そう考えていたところに、義弟とカミサンの友人からコゴミが届いた=写真。

 義弟が持って来たのは三和町で採れたコゴミだった。これはゆがいてマヨネーズ和えにした。カミサンの友人からもらったコゴミはごまよごしになった。

 コゴミはゆですぎない方がいい。癖がないので、さっとゆがいて、シャキシャキした食感を楽しむ。一度目はゆですぎたようだ。シャキシャキが消えて、しんなりしてしまった。

 コゴミもほかの草木と同様、例年より芽生えが2~3週間は早い。いつもの感覚で、大型連休のころにチェックしたら、すでに葉は展開していた、ということになっていただろう。

 前にも書いたが、今年はどうも春の速さを素直に喜ぶ気にはなれない。むしろ、季節が狂い始めているのではないか、そんな思いがふくらむ。

 いわきは、海も山野も、南と北の動植物が混在する、多様性に富んだエリアだ。それを、海の場合は「潮目」と表現している。

相双を含む潮目の海でイセエビやトラフグが獲れる異変が続いている。陸地でもまた、同じような現象がみられる。南方系の動植物が北上している。

ということは、北方系の動植物は北へ後退している? そのうち、進出と後退がはっきりしてくるのではないか。

私はキノコの世界に遊ぶのが好きで、ときどき菌類の本も読む。これら専門家の知見を頭に入れて地域の実態をあれこれ想像する。

平成30(2018)年9月、いわきキノコ同好会の観察会が小川町の山中で開かれたとき、南方系のアカイカタケが見つかった。アカイカタケは「極めて珍しい種」で、「今回のいわき市での発見は、国内14番目」ということだった。

それが南東北まで北上してきた、つまり地球温暖化の影響が菌界にも及んでいる、ということなのだろう。

すると山菜だって、採れるものと採れないものが出てくる、といった事態が起きかねない? まさかそうはなるまいが、頭の中ではそれがだんだん現実味を帯びてくるのを否定できないでいる。

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