2023年4月16日日曜日

エビネが開花

                              
 庭の木が芽吹き、草が芽生えるこの時期、朝と夕方、勝手に「芽むしり仔撃ち」と名付けた作業をする。

 「芽むしり仔撃ち」は先日亡くなった大江健三郎さんの小説のタイトルだ。作品の中身とは関係なく、春がくると「芽」をむしり、「仔」を撃つ(虫を退治する)。

 具体的には、生け垣にからみつくヤブガラシを芽のうちに摘み、生け垣のマサキの新芽を食害するミノウスバの幼虫を退治することを指す。毎年春、大型連休をはさんでのルーティンワークでもある。

ちょうど同じころ、地植えのエビネが咲き出す。拙ブログからそのへんの状況を要約・再掲する。

 ――朝は庭に出て、歯を磨きながら地べたに目を凝らす。つる性植物のヤブガラシが次々に赤い芽を出す。大事になる(ほかの植物にからまり、葉を覆って枯らす)前に芽を摘む、と決めた。摘んでも、摘んでも出てくる。負けられない。

 ついでに、エビネの花を眺める。チラッと目をやるだけでも心が洗われる。ホームセンターからポットに入ったエビネを買ってきて、花が終わったあとに庭に植えた。地植えにしたのは増殖を期待してのことだが、そうは問屋が卸さなかった。花茎を数えたら6本。それだけでよしとするしかない――。

 これが4年前の大型連休中の状況だった。まだ4月中旬、つまりこの年より3週間早いというのに、もうエビネが咲き出した=写真。

 それだけではない。庭木の間にクモが糸を張るようになった。「クモの巣を嫌って、庭に花を植えない家がある」。知り合いがフェイスブックに投稿していた。それを読んで「なるほど」と思ったことがある。

花が咲けば、蜜を吸いに虫が来る。虫がいれば、それをえさにするクモが現れる。そのクモや虫を狩るハチもやって来る。小さな庭の世界にもちゃんと食物連鎖が成り立っている。

近所の家に、自然石と常緑の木を配した日本庭園風の庭がある。築山はないが、枯山水風の空間が広がる。花のある庭に比べると、ここにやって来る虫は少ないだろう。

彩り豊かな庭の食物連鎖を知って以来、近所のその家ではもしかしたらクモの巣やハチを避けるために、和風の庭をつくったのではないか、などと空想するようになった。

今年(2023年)は異常に春が早い。生け垣のマサキも、ヤブガラシ同様、新芽を吹いた。それに合わせてミノウスバの幼虫も孵った。

季節が早いと、どうしても「温暖化」という言葉を思い浮かべる。季節の遅速や寒暖の波とずれはこれまでにもあった。しかし最近は、それが次の段階(温暖化の影響)に移ったのではないか、という危機感を伴うものになってきた。庭の定点観測からでさえ、早い春を喜んでばかりはいられない、という思いが募る。

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