4月23日の日曜日は、2週間ぶりに夏井川渓谷の隠居へ出かけた。少し風はあったものの、晴れてさわやかな一日になった。
渓谷を縫う県道はもちろん、険しい尾根筋まで新緑に覆われていた。4月下旬だというのに、渓谷はもう初夏の装いだ。
アカヤシオ(岩ツツジ)とヤマザクラの花は終わった。隠居の庭にあるシダレザクラも花を散らす一方で葉を広げてきた。
週末、渓谷とその小集落を循環する時間のなかに身を置くようになって四半世紀。1年の季節の巡りのなかで、アカヤシオが咲くと次はシロヤシオ、庭のシダレザクラが咲き出すと樹下には春のキノコのアミガサタケが――といった自然の順番と連環が見えるようになった。
23日はまず、新緑の対岸に白い点々がないかどうかをチェックした。中腹の枯れ松のそばや、緑と緑のあわいに、その白い点々がある。双眼鏡で確かめると、やはりシロヤシオのようだ。
シロヤシオは毎年、花を咲かせるとは限らない。が、例年、春の大型連休が終わるころから花が目立つようになる。
渓谷で最初にシロヤシオの花に気づいたのは、むろん隠居へ通うようになって1~2年たったあとだ。
冬枯れの斜面にアカヤシオのピンクの花が咲く。これが、渓谷に春がきたしるし。すると、周りの木々が芽吹いて、一帯は淡い緑を中心にした水彩画のような世界に変わる。
ピンクの花は、土地の方言で「岩ツツジ」(そのころ、和名が「アカヤシオ」であることを知らなかった)。この花しか頭になかった人間には、新緑をバックに咲く白い花は、アカヤシオ以上に衝撃的だった。
シロヤシオは、幹が松肌に似て、葉が5枚ある。それで、別名「ゴヨウツツジ」。さらに、土地の人は「マツハダドウダン」と呼ぶ。
過去のブログを読むと、この木も少しずつ開花が早まっている。一昨年(2021年)は4月中旬に開花を確認した。私が渓谷に通い始めてからでは最速だった。
シロヤシオの開花を見極めるには格好の「標本木」がある。隠居から歩いて5分ほど下流の対岸に、渓流へとこぼれそうなくらいに枝が垂れさがっている。車で行き来している分にはわからない。散策を兼ねて歩いていると、目に入る。
隠居からの帰り、山際に車を止めてチェックした。木の間越しにのぞくと、七分咲きくらいになっていた=写真。2年ぶりに清楚な花の雰囲気を味わった。
今年はどうやらシロヤシオの「咲き年」だ。早すぎる春がきて、初夏になった。その花の見ごろが、人間の世界の大型連休と重なる。その意味では、今年はシロヤシオを撮影する絶好の機会かもしれない。
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