2023年4月4日火曜日

花見とちらしずし

                     
 「花見」といっても桜のソメイヨシノではない。夏井川渓谷では、アカヤシオ(岩ツツジ)のことだ。

 その花見にカミサンが親友を誘った。昼は食事を楽しもうということで、親友はちらしずしをつくり、カミサンはデザートなどを用意した。

 日曜日(4月2日)の朝、親友の家を経由して渓谷の隠居へ向かった。山々はヤマザクラの白とピンクで彩られ、道端のシダレザクラやレンギョウも鮮やかな色をまとっている。

 渓谷のアカヤシオは隠居の対岸だけでなく、奥山までピンクの花を付けていた。谷間では黄色、黄緑、臙脂の木の芽が吹き始めた。「春前線」は街から渓谷へ、ではなく、街にも谷にも同時にやってきた。

 今年(2023年)は3月が異常に暖かかった。いわき市の内陸部、山田町では3月中に20度を超える日が6日もあった。18~19度台も5日を数える。つまり、月の3分の1以上は最高気温が20度前後だったことになる。

その前、1月25~26日には強烈な寒波が襲来した。二十四節気のひとつ、「大寒」は1月20日だった。それを過ぎたばかりだから、このとき冬は底を打ったと容易に想像がついた。

ソメイヨシノは秋から冬にかけて、一定の低温(マイナス5~15度)にさらされると、春が近づいていることを感知して覚醒するという。いわゆる「休眠打破」だ

この冬は、師走後半に少し強い寒波がきたあとは、穏やかな日が続いた。夏井川渓谷の隠居にあるネギ畑も、カチンカチンに凍ることはなかった。

ソメイヨシノの休眠が打破されたのは師走後半か、1月下旬か、シロウトには判断がつかない。が、とにかく観測史上最速で春がやってきた。

例年の日程で桜祭りを計画していた地域や団体はあわてたろう。私らのように、日曜日だけ渓谷を訪れる人間も、自然の動きに合わせて「花見」を前倒しした。

昼が近づくと、隠居のこたつにごちそうが広げられた=写真。メーンは小桶に入ったちらしずしだ。具はレンコン、菜の花、タイとサーモンのスモーク。それに漬物、ドレッシングサラダ、ゆで卵、イチゴなどが添えられた

ふだんはコンビニで買ったサンドイッチとコーヒー牛乳くらいですませるから、とびきり豪勢な昼食になった。

口の中にタイとサーモンの「燻(いぶ)し味」が広がる。焚き火の煙を浴びながら、バーベキューをやったときの記憶がよみがえる。

キャベツとキュウリ、昆布の漬物は、「一汁一菜」で知られる料理研究家土井善晴さんの本にあったものだという。作り方は聞き逃したが、後味がさっぱりしていていい。これなら酒のつまみにもなりそうだ。

食事をすませるとカミサンは庭のスイセンの花を、親友はヨモギの新芽を摘み始めた。ヨモギはいずれ何かの食材になるのだろう。

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