2023年4月8日土曜日

生け垣の春も早かった

                     
 ソメイヨシノばかりか、ヤマザクラもほぼ同時に開花して、街も、周囲の丘や山も、白やピンクの花で点描された。それこそ「百花」が乱れ咲くような早い春はちょっと記憶にない。

 花を楽しむのは、人間の自然な感情だ。私も、夏井川渓谷のアカヤシオ(岩ツツジ)には引かれる。もちろん、シダレザクラやソメイヨシノにも。

 同時に、春がくると憂鬱になるものもある。朝、歯を磨きながら、家の庭や生け垣に目を凝らす。

やっぱり早い春に合わせて現れた。地面からヤブガラシの赤い芽が出ている。生け垣のマサキが新芽を吹いている。

すると、マサキの若葉を食害するミノウスバ(ガの一種)の幼虫も。晩秋、枝に産み付けられた卵が、同じようにかえっていた。

 ミノウスバとマサキの関係はこんな感じだ。11月の声を聞くと、ミノウスバの成虫が飛び交い、マサキの枝先に産卵する。卵はそのまま冬を越し、マサキの新芽が膨らみ始める春の終わりごろに孵化する。

幼虫は、かえった直後はかたまって新芽を食べているが、成長するにつれて木全体に散らばり、さらに激しく若葉を食害する。5月中旬にはマサキを離れ、石の裏などに繭をつくって蛹化し、晩秋に羽化して成虫になる。

 幼虫が木全体に散開する前に退治しないと、葉を食べつくされる。それでも足りないと幼虫は別の木に移動する。隣家から苦情がきたことがある。

 予防策は簡単だ。産卵が終わったころを見計らって、その枝の部分だけをカットする。しかし、敵もさるもの、「時間差攻撃」をしかけてくる。生き残った卵が5月の大型連休のころ、孵化する。

 もしや、孵化していないか。早すぎる春に連動して、めざめたのではないか。見ると、新芽が数カ所で食いつくされ、葉裏に体長数ミリの幼虫がかたまっていた。例年より目覚めが1カ月近く早い。

 こうなるとしばらくは朝晩、じっくり生け垣を見て回らないといけない。時間をずらして目覚めた幼虫が、別のところで葉を食害している。葉ごと除去する。これを何度か繰り返しているうちに幼虫は姿を消す。

 そのなかで、先日はマサキの葉裏に1匹、夏井川渓谷の隠居の庭でもよく見かける虫が止まっていた=写真。むろんミノウスバの成虫ではない。

 名前はわからない。体長は10ミリ余り、背中は黄緑色をしている。ネットで調べると、ほどなく「ツマグロオオヨコバイ」とわかった。カメムシ目で、成虫で越冬する。農作物を含むさまざまな植物の汁を吸う。

マサキの葉裏にいたのは、この虫の生態からしてこういうことらしい。私を察知し、ササッと横這い(横歩き)をして葉裏に隠れた。

 早すぎる春は楽しいことばかりではない。果樹や農作物に悪さをする虫たちの出現も早めた。

 そういえば、ツバメが近所に現れ、早くも巣の中に入っていたと、カミサンが言っていた。自然の営みも、人間の暮らしも、こうして連動してめぐり続ける。

0 件のコメント: