2023年5月10日水曜日

検索エンジン

                      
 春先、ノートパソコンに新しい検索エンジン「ビング」が加わった。利用するつもりはなかったが、人工知能(AI)の「チャットGPT」に関する情報が、ネットだけでなく新聞・雑誌でも急増したので、どんなものか知りたくなった。

 ビングは「チャットGPTの技術を搭載し、2月に公開された検索エンジン」(朝日新聞)だという。

まず、ビングについて尋ねると、ビング自身が「マイクロソフト社が運営する検索エンジンです」と答える。そのへんから始めてみた。

夏井川渓谷のアカヤシオが満開だったころ、方言を尋ねると、「岩ツツジ」が出るかと思ったら、「アカヤシオ」の答えが返ってきた。ローカルなもの(情報の少ないもの)にはどうやら反応が鈍いようだ。

アカヤシオの次に咲くシロヤシオについても尋ねた。「シロヤシオの木について教えてあげますね」ときた=写真。生態などはウィキペディアから持ってきており、詳細情報もウィキペディアを見るように促す。

「シロヤシオは美しい花を咲かせるだけでなく、木材としても利用されます。(略)家具や工芸品などに適しています」

それは知らなかった。もっと尋ねると、静岡県川根本町で作られているものが有名だという。ふるさと納税の返礼品として川根茶がある。その茶箱がシロヤシオ製らしい。

シロヤシオの分布域も尋ねた。「すみませんが、シロヤシオの分布域については、検索結果が少なくて回答できません」。

そのあと、はずみでシロヤシオが入った詩を要求してみる。「シロヤシオの流れに乗って/遠くまで旅をしたい/海の色は青く澄んで/でも晴れやかになる//シロヤシオは冷たくて/触れるとぞくりとするけれど/それが好きなんだよね(以下略)」

「シロヤシオって山の木だよ」と反論すると、「シロヤシオは山の木ですね。私は海のシロヤシオという暖流のことを思っていました」。暖流? 黒潮、つまりクロシオとシロヤシオがごっちゃになった?

こうして遠いことではなく、近いこと(知っていること)を質問すると、その限界が見えてくる。私自身について聞いた際も、途中からいわき地域学會の仲間とごっちゃになった。

パソコンが一般に普及し始めたころ、検索にはかなり時間がかかった。それを解消してくれたのがグーグルだった。今も私はグーグルの検索エンジンを利用している。それでも、中身(情報)を100%頼る気にはなれない。

チャットGPTにしろ、ビングにしろ、不完全というか、虚偽が混じることを前提に付き合う――現時点ではそんな距離感で対応した方がよさそうだ。

 中国語では、コンピューターを「電脳」と書く。言いえて妙というか、自分の脳とは違う「外部の脳」という受け止めができる。

チャットGPTに関する利用推進と危惧の声が急速に広がったのも、この外部の脳に頼る怖さと表裏をなしているのではないか。基本は、やはり自分の脳で考える、これに尽きると思うのだが。

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