カミサンがなにげなくつぶやいた。「夜、眠れないというから、枕カバー用に蚊帳(かや)をあげたの。すると、熟睡できたって」。カミサンの友達の話である。ほんとうか。
年寄りが熟睡できないのは、経験的にわかる。熟睡には体力が要る。その体力がなくなっているのだ。
いつごろからか、そのことを自覚するようになった。そして今。布団にもぐりこむと、すぐ眠りに就く。が、3~4時間後には目が覚める。9時就寝だと、12時か1時ごろだ。
そのあとがよろしくない。睡眠薬代わりの本は、最初布団に入ったときには抜群の効き目があるのだが、2回目以降はあまり効かなくなる。
眠るために読むのに、ますます頭がさえて読み続けてしまう。そうなればなるほど、朝までの睡眠が浅く、細切れになる。
睡眠の質からいうと、前半3~4時間はともかく、後半3~4時間は「不眠」に近いものになってきた。
わが家では、カミサンが古着のリサイクルの“中継基地”のようなことをしている。古い蚊帳も、どこからか届いた。捨てるのはもったいない、しのびない、といったものも含めて、とにかく受け入れる。
蚊帳は何枚かにカットされてたたんである=写真。一部は今、茶の間のカーテンになっている。カミサン自身も枕カバーに使っている。
「オレも枕カバーにしてみるかな」。友達が熟睡したという話を聞いた晩、さっそく、蚊帳の端切れを枕カバー(正確には枕シート)にして寝床に入ると――。
3~4時間でいったん目が覚めたのは以前と同じだが、その後が違っていた。本を読むと、またすぐ眠りに入った。というわけで、ほんとうに久しぶりに「熟睡」の実感がわいた。
なぜ蚊帳を枕カバーにすると睡眠の質量が改善するのか――。ネットで文献を探すとあった。
北海道でへき地医療に従事していた福島出身の医師が、子どものころ、蒸し暑い夏の夜、蚊帳の中で快適に過ごしたことを思い出す。
蚊帳を肌に当てたら、睡眠障害で悩んでいる患者を救えるのではないか。戦前の大麻の蚊帳を取り出して枕カバーをつくり、自分の患者に無料で配ると、睡眠の質はもちろん、全員が朝の満足感を得たという。その臨床結果を漢方専門誌「漢方の臨床」で紹介した。
戦前の「蚊帳の原料は、日本産麻(大麻)であり、麻(大麻)は熱伝導率がよくて、頭の熱感をとることで頭を冷やす効果があるため、よい睡眠の助けになる」。
そうか、頭の熱を逃がすことが大事なのか。前はタオルで枕を覆っていた。熱は逃げ場所がなかった。そこに小さな網目の付いた蚊帳をカバー代わりに置いた。それだけでも熱が散るようになったか。
少なくとも、蚊帳を使い始めてからは、睡眠時間が2時間ほど増えた。これは大助かりだ。
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