2023年5月30日火曜日

これがイノシシの破壊力

                     
 もう耕作はやめたのだろうか。夏井川渓谷の隠居へ行く途中、そう思わせる畑が道路沿いにある。

 渓谷に入ると森が続き、ちょっと開けたところに家と畑、それより広いところに家々と田畑が連なる小集落がある。隠居はそうした小集落の一つにある。

 森の中の一軒家風のそこは、小集落の「飛び地」なのかもしれない。段々畑にはネギや里芋、トウモロコシなどが栽培されていた。

 昨年(2022年)か一昨年かははっきりしないが、家から一番遠い道路沿いの小さな畑から作物が消えた。それが「耕作をやめたのかな」と思った最初だった。

 5月28日の日曜日、隠居へ向かっていると、そのへん一帯が掘り返されて黒い土がむきだしになっていた。「おや、今年は野菜を作るのか」。にしても……、ちょっと様子がおかしい。耕運機で耕したような整然さとは程遠い。

 隠居からの帰り、車を止めて掘り返されたあとを確かめた。畑=写真=だけでなく、土手も黒い土がむき出しになっている。これは人間のすることではない。

 犯人は? ピンときた。これだけの破壊力を持った生物はイノシシしかいない。渓谷で、これまで目撃してきたイノシシのラッセル痕が思い浮かぶ。ブログに記録されているものを再録する。

――(2019年3月)隠居からの帰り、磐越東線の江田駅前を過ぎ、踏切を渡ると、山側の高い土手がほじくり返されていた。

ここは前にも激しく広くほじくり返されたことがある。拙ブログで確かめると、原発震災からおよそ1年1カ月後、2012年4月のことだった。

(2017年5月)隠居の下にヨシ原が広がる。夏には2メートルほどに生長したヨシで覆われる。ある日、その一角が畳2枚分くらいほじくり返された。

頑丈な吻(ふん)で土を掘り、石を飛ばしてミミズをあさったようだ。ヨシの地下茎が切断されてむき出しになっていた。

イノシシは、複数の群れが同じ地域を利用しているらしい。寿命は長くて10年というから、代替わりをしながら山里を転々としているのだろう――。

わが隠居では幸い、菜園そのものが破壊されるようなことはない。むしろ、草刈りが大変なので、「ラッセルしてくれてありがとう」そんなレベルにとどまっている。

しかし、集落で暮らす人々は、そうはいかない。田んぼに「電気柵」を張り巡らせ、畑をトタン板で囲う。そういった自衛策をとらざるを得ない。

隠居へ通うようになって四半世紀。道路沿いでたびたびイノシシ被害を見てきたが、今回ほどの広さでラッセルに及んだのは初めてだ。いったい何頭現れたのだろう。

蛇足ながら、前に隠居の庭が小さな穴だらけになった、という話を書いた。地元の人は、「タヌキではないか」という。タヌキもミミズを好むらしい。

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