2023年5月3日水曜日

クレパス画名作展

                     
 日曜日(4月30日)は、朝からあいにくの雨。夏井川渓谷の隠居へ行くのをよして、家で本を読んで過ごした。

 昼近くになると、さすがにカミサンがしびれを切らしたらしい。日曜日は気分転換を兼ねて家を離れる。天気がよければ渓谷の隠居で土いじりをする。それができないので、「美術館へ行こう、昼ごはんも外で食べよう」。言うとおりにアッシー君を務めた。

昼食は近くのコンビニからサンドイッチとコーヒー牛乳を買って、夏井川の堤防で菜の花の黄色とヤナギの新緑を眺めながらすませた。

いわき市立美術館では「クレパス画名作展――近代の巨匠から現代の作家まで」をやっていた(6月4日まで)。

クレヨン、パステル、クレパス。子どものころ、画用紙に絵を描いたが、絵の具はどれだったか。クレヨンの印象が強いが、今となっては判然としない。

チラシに簡単な説明が付いていた。いずれも「棒状絵の具」だが、パステルは17世紀、クレヨンは19世紀末~20世紀初頭に、それぞれヨーロッパで発明された。

これに対してクレパスは、クレヨンを改良する形で、1925(大正14)年に日本で発明されたという。

その発明に関係したのが画家山本鼎(かなえ=1882~1946年)で、展覧会場に入るとすぐパネルで経緯が紹介されていた。

チラシにもある「クレパスの誕生」によれば――。鼎がフランス留学から帰国途中、5カ月ほどロシアに滞在し、児童画や農民による工芸品に感銘を受けた。

帰国後、彼は「自由画運動」と「農民美術運動」を提唱、クレヨンメーカーと協力して子どもが描きやすい絵の具の改良に取り組んだ。その結果、1925年に新しい描画材料の「クレパス」が開発された。

クレヨンとパステルの長所を取り入れた、日本独自の描画材料だったとは、うかつにも知らなかった。

鼎は夭折した詩人・画家村山槐多(1896~1919年)のいとこだ。槐多の理解者・支援者でもあった。

最近、荒波力の評伝『火だるま槐多』(春秋社、1996年)を読んだが、鼎とクレパスの関係については触れていなかった。それを補足するような偶然の情報に驚いた。

出品作家についても目を見張った。熊谷守一、石井柏亭、梅原龍三郎、林武、岡鹿之助、浅井閑右衛門、鳥海青児、猪熊弦一郎、小磯良平、三岸節子、脇田和、岡本太郎、山下清、加山又造……。確かに「巨匠」たちがクレパス画を手がけている。

21世紀に入ってからの作品、つまり「現代の作家」たちでは舟越桂や入江明日香あたりが記憶にあった。

入江明日香(1980年~)は3年前、茨城県天心記念五浦美術館で企画展が開かれ、「若手アーティストの中でもトップランナーのひとり」であることを知った。ほかの「現代の作家」たちもそれぞれ独自の作風を確立しているようだ。

その意味では、思わぬ眼福だった。カミサンは16色のクレパスを買った。喜多條忠作詞「神田川」の「24色のクレパス買って……」が脳内に鳴り響いていたのだろう。

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