「おや、咲いたか」。雨が上がった水曜日(5月24日)の朝、庭へ出るとドクダミの白い花が目に留まった=写真。
その数日前、とがった筆先のような蕾が形成されているのに気づいた。気温が急に上がったと思ったら、雨が降って急に下がった。その翌日の開花だ。植物たちも寒暖の大波には戸惑っていることだろう。
ドクダミにも八重咲きがあると知ったのは7年前。そのときはなぜかそんなに驚かなかった。
――小川町の知人の家は、南側が落葉樹と山野草とで小さな林になっている。日本の里山をそっくり持ってきたような風情だ。「山野草が好きなので」。自宅のそばで介護施設を運営している知人がいう。
キキョウが咲いている。ホタルブクロも庭のあちこちに咲いている。植えたのが繁殖したのだろう。山野草にはそういうたくましいものが結構ある。
わが家の庭のホトトギス、ユキノシタ、ドクダミがそうだ。ミョウガも、野菜というよりは山菜、あるいはハーブの一種だろう。春には芽を出し(食材のミョウガタケになる)、月遅れ盆の前後からミョウガの子(これも食材)が現れる。
ドクダミも、陰干しをして煎じると「どくだみ茶」になる。知人の庭のドクダミは“八重咲き”だった。初めて見た――。
当時のブログの抜粋だが、単に「初めて見た」で終わっている。その後、わが家の庭にも八重咲きのドクダミが現れた。そのときは、「驚いて」いろいろ調べている。ブログにも書き残した。
――30年以上前、ドクダミを何株か植えた。それが毎年数を増やしてきた。2021年も白い十字の花を付けた。
しかし、花と見えるのはヤマボウシと同じく総苞片(そうほうへん)で、ほんとうの花は中央の黄色い粒々だ。そのなかに八重咲きのドクダミがあった。
驚いた。ネットで調べる。けっこうあるらしい。図書館から多田多恵子『したたかな植物たち――あの手この手の㊙大作戦』春夏篇(ちくま文庫)を借りてきて読んだ。
この本にも驚いた。八重咲きは突然変異の一種らしい。「このような八重咲きの出現は『花びら』が進化する過程を示すモデルとして注目されている。もともと葉の変形なので、緑がかった苞がつく突然変異株も見つかる」
掲載写真の説明にも「葉と総苞と個々の花につく小さな苞の遺伝的調節が狂うと、多様な『八重咲き』が生まれてくる」とあった。
なかでも、ドクダミのあの独特のにおいの解説が新鮮だった。このにおい物質には細菌やカビの増殖を抑えるはたらきがある。
「冷蔵庫の中をドクダミの葉で拭けばカビ退治ができるし、細菌が関与して生じる冷蔵庫臭もすっかり消える」のだそうだ。
ドクダミは「受粉せずに結実(無融合生殖という)する便利な性質を獲得しているので、せっかくの『花びら』に似せた広告塔もじつは無意味である」。なんのための「花」戦略なのか――。
以来、わが家の庭に限らず、ドクダミの花を見ると、十字か八重咲きか確かめる癖がついた。
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