旧知の元教授から電話がかかってきた。「NHKの記者から問い合わせがあった。夏井川で木の枝を沈めてカニ漁をしている映像がある。今もやっているのか、ということなのだが」
「前に一度、河口で目撃したことがある。確かモクズガニ漁だった」。正確には「モクズガニ」だが、つい電話のやりとりのなかでは「モズクガニ」になった。先方もそれにあわせて「モズクガニ」と応じた。ほかの人たちもよく間違うらしい。
結局、あいまいなままで話が終わった。もう一人、夏井川下流域に知り合いがいるので、そちらに聞いてみる、ということだった。
その映像が金曜日(4月28日)の夕方、NHKローカルの「福むすび・ふくしま時間旅行」で紹介された。
昭和57(1982)年4月14日に放送されたものだという。タイトルは「夏井川のカニ漁」。川船で河口に仕掛けた木の枝を引き揚げ、モクズガニを捕る様子から、家庭でつくった「カニご飯」(地元では「がにまんま」と言う)などを取り上げていた。
字幕には「『ササ漁』と呼ばれる昔ながらの漁法」「シイ(椎)の木の枝を沈め身を隠したカニをとる」「春、産卵のために川をくだったカニを狙う」「とったカニの多くは家庭で食べた」「カニご飯、カニみそ」「カニは春のごちそうだった」などとあった。
さて、新川合流点の夏井川に、けがをして何年も残留したままのコハクチョウがいた。「左助」と名付けられた。対岸(平山崎)のⅯさん(故人)が毎日えさをやり続けた。
左助は「放浪癖」が強いのか、ずっと下流の河口まで移動することがあった。そのつど、Ⅿさんが軽トラで堤防を下り、えさをやった。それを私も追いかけた。
そのとき、「カニ漁」をしているらしい川船を目撃した。どんな状況だったかを、平成21(2009)年4月の拙ブログから抜粋する。
――4月15日早朝、うまい具合に雨が上がったので、自転車で「左助」を捜しに行った。「左助」は河口近くの左岸にいた。「白鳥おじさん」のMさんにえさをもらって食べ終えたばかりらしい。ヨシ原の広がる右岸へそろりと泳ぎ出すところだった。留鳥のカルガモも、カラスも「左助」の周りに群らがっていた。
ほかには川船が1隻。川の中央にとどまって、老人とおぼしき人が水中に沈めた木の枝と籠を引き揚げてはなにかやっていた=写真。
カニ漁か。釣りも、網漁も、籠漁も経験ゼロ、そちらの方面には全く知識がない。こうして地元の人間と夏井川のかかわりを目の当たりにするのは楽しい。川の研究材料が増えるというものだ――。
NHKのアーカイブ映像と様子が似ている。時期的にも同じだ。「カニ漁」はやはりモクズガニ漁だったのだろう。
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