2023年5月15日月曜日

ヨモギからカヌレまで

                     
 早い春に追われるように、大型連休前は山菜のお福分けが続いた。てんぷら=写真=にしたり、ゆでて和え物にしたりした。セリのおひたし、フキの煮物なども口にした。

 東日本大震災と原発事故の直後は、山菜を食べること自体、制限された(もっとも、山菜を採りに行けるような状況でもなかったが)。

 今も、いわき市は野生キノコの出荷制限が続いている。山菜は一部、制限が緩和された。震災当時に比べたら状況は改善されつつある。

 春になると、ひとまず行政のホームページをチェックする。最新のデータでは、コゴミ(クサソテツ)、シドケ(モミジガサ)、フキ、ウドは出荷制限がなくなった。タケノコ、ゼンマイ、ワラビ、タラの芽、コシアブラなどはまだ制限が続いている。

 そうした現実を踏まえて、夏井川渓谷の隠居へ出かけると、四季折々、除染された庭だけをウオッチングする。

 事故以来、蓄積された「知見」もある。ゆでこぼすと野生キノコの線量は下がる。同時に、キノコのうまみも失われる。

 ベクレルはキロ当たりで表示される。一度に1キロもキノコを摂取することはありえない。せいぜい100グラムとか200グラムだろう。ベクレルも10分の1とか5分の1にとどまるはずだ。

キノコはゆでこぼしたら味が落ちる。それを承知で採りに行くのもばからしい、というわけで、森へはもうずいぶん入っていない。

この春一番驚いた食べ物は、渓谷の隠居の庭に生えたヨモギの新芽を使ったパンケーキだ。ヨモギの緑とパンケーキのもちもち感が新鮮だった。

山菜だけではない。大型連休を利用して、知人が就職・進学などで新しい生活を始めた子供の様子を見に行ったり、遠方から実家へ里帰りをしたりした。

珍しい食べ物をおみやげにちょうだいした。「トリュフのカヌレ」というのを初めて食べた。カヌレは、「カヌレ・ボルドー」が正式な名称で、フランス・ボルドーの女子修道院でつくられたのが始まりらしい。

前に食べたとき、ネットで検索してわかったのだが、ボルドーはワインの名産地で、ワインの澱(おり)を取り除くために卵白が使用される。すると、卵黄が大量に余る。この卵黄を利用して焼き菓子のカヌレが考案されたのだという。

「トリュフのカヌレ」は、カヌレの中にキノコのトリュフがまざっている。トリュフに縁遠い人間には、「蜜蝋の香ばしい食感と新鮮な卵をベースにした生地の、もっちりした内側のコントラスト」はともかく、「トリュフの高貴な香り」はよくわからなかった。

神戸名物の「いかなごくぎ煮」は、晩酌のおかずにした。イカナゴは、東日本ではコウナゴで、イワシなどと並んで、沿岸における食物連鎖の底辺付近を支える重要な魚類だという。

瀬戸内海沿岸では、「釘煮(くぎに)」と呼ばれる郷土料理で知られている。今度で2回目だった。「またお願いします」とは、さすがにいえるわけがないか。

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