5月に入ると、カミサンが床の間に「兜(かぶと)」を飾った。3月はなんだったか。フランス人形だったり、日本人形だったりした記憶がある。3月と5月はそれで床の間が少し華やぐ。
孫が小さかったころ、3月のフランス人形は不気味だったらしい。雛(ひな)人形の代わりに、ドレスを着た青い目の人形や和服を着た黒髪の人形などが何体も並んだ。大人でもいささか異様な感じを受けた。
拙ブログを読むと、当時、3歳と1歳だった孫は、遊びに来ても青い目の人形には近づかなかった。小学校に入学するころまで、フランス人形を見ると、後ずさりした。孫が怖がるのは人形の表情がリアルだったからだろう。
5月は兜のほかに、絵のぼりの「鍾馗(しょうき)」が飾られた。これにはおびえるようなこともなかった。
鍾馗の絵のぼりは、尊敬するドクターが亡くなり、奥さんが東京へ移るというので、ダンシャリで出てきたのを引き取った。
今年(2023年)は兜だけだった。後ろの壁には、構図的には油絵と少しも変わらない水墨画の軸物が掛けられた=写真。
いつものルーティンと軽く受け止めていた脳内に、ある日、電撃が走った。大谷翔平選手が所属する米大リーグのエンゼルスでは、今年、ホームランを打った選手に、日本の兜をかぶせてベンチに迎え入れるパフォーマンスを始めた。
大谷がホームランを打つたびに、兜をかぶった映像がニュースで流れる。5月に入って間もなく、大谷の兜を見ていて、端午の節句を思い出した。
エンゼルスはどんな狙いから「ホームラン兜」を始めたのだろう。ネットであれこれ探る(メディアのニュースを読む)と、たまたま球団が今シーズン、ホームランを打った選手を迎えるパフォーマンスに日本の兜を使うことを決めたということらしい。
「二刀流」の大谷が賛同し、通訳の水原一平氏が日本の小売店経由で薩摩川内市の工房から取り寄せた。
最初に兜をかぶったのは大谷同様、強打者のマイク・トラウト。4月7日のことで、それまでは、ホームランを打った選手はナインに迎えられ、テンガロンハットをかぶってベンチに戻った。
先のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本が米国を破って世界一に返り咲いた。決勝戦では最後の最後に、大谷がトラウトを三振に打ちとったシーンが忘れられない。
ホームランパフォーマンスに日本の兜を取り入れたのは、「侍ジャパン」大谷への敬意があってこそ、だろう。
おかげで、というわけではないが、今年の「こどもの日」には兜についていろいろ調べてみた。角のように立っているのは「鍬形(くわがた)」、その間にあるのは「前立(まえたて)、頭を守るのは「兜鉢(かぶとばち)、……。
エンゼルスの兜の前立は獅子だが、わが家のそれはよく見ると龍だった。正式には「龍頭(たつがしら)」というらしい。どこにでも勉強の材料は転がっている。
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