2023年6月3日土曜日

丸ごとゆでる

        
 メキシコ生活を経験している後輩の家を訪ねたら、先客がいた。前に、後輩と一緒に夏井川渓谷の隠居へ来たことがある。確か、いわき在住の中南米の女性だ。カミサンが隠居へ来たときの話をすると、思い出してニコッとした。

 後輩の家では、母家をはさんで南北に畑がのびる。南の畑の西側、庭木が繁るあたりに2人がいた。

 庭木の下に、今までなかった二ホンミツバチの巣箱がある。彼がフェイスブックにアップしたところによると、4月中旬、巣箱をつくって、分封した野生のハチの集団をそこに移した。それが功を奏したらしい。

 いやあ、養蜂も始めたのか――。彼のDIY精神と、次々に新しいことに挑戦する好奇心とエネルギーに舌を巻いた。

一方で、カミサンが、女性が手にしているものを見て声を出した。「アーティチョーク」。畑の一角にそれが植わってある。蕾が大きく膨らんできた。

最初にアーティチョークの現物を見たのは震災前。苗を2株もらったので、夏井川渓谷の隠居の畑に植えた。そのときは食べずに、花を楽しむだけにした。

――アーティチョークはつぼみを食べる。そのつぼみが膨らみ始めたので、花柄ごと切り取った。驚いた。皮(がく)がブリキ板のように硬くとんがっている。触れると痛い。こんな皮をむいて食べるのか。

皮をどうはがしたものか、アイデアが浮かばない。手を出せば痛い。水を入れたコップに入れておいたら、薄紫色の花が咲き出した。

アザミに似た、いかにもキク科らしい線状花だ。別名「チョウセンアザミ」は、大きなアザミのような花、という印象から付いたか。

花はきれいだが、この皮だ。どう考えても、下ごしらえは血を流さずには済まない。手が出ない――。

当時のブログを読むと、ただただとまどっている。それから10年以上たった令和2(2020)年6月。後輩からアーティチョークのお福分けにあずかった。そのときにも、ブログにとまどいを書いた。

――がくの先端部分を切り落とし、大きな鍋で湯を沸かし、アーティチョークを入るだけ入れて、40分ほど加熱した。

 それからが大変だった。原形はソフトボール大だが、皮をむいていくと、どんどん小さくなる。どこまでむけばいいのだろう。タマネギと同じで、最後はなくなってしまう?

なんと直径5センチほどの「花托」といわれるところ、そこが食用部分らしい。コーヒーや紅茶でいえば、「受け皿」の真ん中部分。下処理に要した時間からすれば、見返りは圧倒的に少ない――。

さて、今回はどうしたものか。アーティチョークを食べ慣れている女性は、お湯に塩を振って、丸ごと30分ほどゆでるという。

それで、針のように硬い皮がやわらかくなる。それから皮を1枚ずつはがし、付け根に少し残る果肉を歯でこそげ取る。最後に花托を刻んで食べる。今回は実に簡単だった。シェフよりシュフの知恵、である。

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