2023年6月8日木曜日

超高層ビルの解体

                     
 5月31日の夜、たまたまテレビをつけたままにしていたら、「解体キングダム」(NHK)が始まった。なんと東京・浜松町にある世界貿易センタービルの解体を追う番組だった。

 すぐいわき民報のテレビ欄で内容をチェックした=写真。「東洋一の高さを誇った世界貿易センタービル解体に伊野尾彗が潜入 前代未聞の特許工法で超高層ビルを解体せよ」

 伊野尾彗(いのお・けい)はタレント・歌手・俳優で、「HeySayJUMP」の一員だそうだ。

 彼がレポーター役になって番組が進行する。「超高層に特有の強い風が障壁となり、重機を使った解体が行えないなか、職人たちは世界初の新工法で立ち向かう」

長方形に切った床がクレーンで1枚ずつ地上に降ろされる。外壁も特別の装置を使って吊り下げ、撤去される。

 50年以上前、いわきから東京へ飛び出して新聞店に転がり込んだあと、超高層ビルを建設する企業の孫請け会社でアルバイトをしたことがある。一時はその「飯場」で出稼ぎの人たちと寝食を共にした。

 高度経済成長期、霞が関ビルが建設される。父親をはじめ、ふるさとの人間が孫請けの作業員として働いていた。その縁で超高層ビルでのアルバイトが始まった。

 仕事は現場のコンクリート片の片づけや、鉄骨の外側に設けられた仮設エレベーターの運転(ボタンを押すだけ)だった。

 霞が関ビルのほかに、同じ建設会社が手がけている浜松町の世界貿易センタービルや新宿の京王プラザホテルに、臨時に派遣されることもあった。

 「解体キングダム」で解体される建物が世界貿易センタービルと知ったときには、アルバイトで通ったことを思い出してつい見入ったのだった。

 日本一高いビルとして36階建ての霞が関ビルがオープンしたのが昭和43(1968)年。40階建ての世界貿易センタービルは同45年、47階建ての京王プラザホテルは同46年にオープンする。

 それで思い出すのは、昭和39年の東京オリンピックのあとに高校、中学校を卒業して東京の会社に就職する――という設定で始まった、平成29(2017)年の朝ドラ「ひよっこ」だ。

 高度経済成長のエンジンがかかり始めたころの東京で、「奥茨城村」出身の谷田部みね子や、「小名浜中学校」を卒業したばかりの青天目澄子(なばためすみこ)らがけなげに生きる青春ドラマだ。

みね子の父親は東京へ出稼ぎに行き、いったん稲刈りに戻って来たものの、再び上京して失踪する。前は国会議事堂の見える霞が関のビル建設現場で働いていた。つまり、私のようなアルバイトと同じ現場で働く年配者の一人だった。

「ひよっこ」のときもそうだったが、「解体キングダム」でもつい、自分の若いころを思い出して、何とも言えない気持ちになった。

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