2023年6月10日土曜日

川と戦争

                      
 先日は一日中、しとしと雨が降った。夕方には歩道が冠水した=写真。それだけで心穏やかではいられなかった。そこからの類推だが……。

 ウクライナでドニエプル川のダムが決壊し、下流域が突然、洪水に見舞われたというニュースに接して、言いようもない不安と恐怖に襲われた。川が戦争の道具、いや武器に使われたのか――。

 ロシアが侵略を開始して以来、ウクライナがどんな国なのか、無関心ではいられなくなった。基本は、自然から国の特徴をつかむこと。それには川を軸にして見るのがいい。前にそうしてブログに書いたことがある。それを再掲する。

――ウクライナのほぼ中央をドニエプル川が流れている。水源はロシアのヴァルダイ丘陵。ロシアからベラルーシを抜け、ウクライナの中央部を北から南に流れて黒海に注ぐ。全長2285キロという、欧州第三の大河だ。

キエフの北に位置するチェルノブイリ原発はこの川の支流そば、南ウクライナにある欧州最大のザボリージャ原発はこの川のそばにある。

ウクライナは国土の半分が平野だという。なかでも中央部と南部の平野は肥沃な黒土に覆われ、小麦などの耕作地が広がる。昔から「欧州の穀倉地帯」とか「欧州のパンかご」とかいわれてきたのは、ドニエプル川があるからだ。ウクライナの国旗は青空の下に広がる麦畑を表している。

その平原の村に生息し、あるいは渡って来る鳥に、カッコウやツバメ、ヤツガシラ、小夜鳴き鳥(ナイチンゲール)、キジバトなどがいる――。

戦場がドニエプル川流域に集中してからは、なおさら同川を軸にしてみるようになった。川は人と物とが行き交う交通路だが、領土を分かつ境界でもある。ウクライナのへルソン州あたりがそうなっているらしい。半年前にこんなことを書いた。

――ロシアは同州を一方的に占領したが、現在は左岸域に撤退した。右岸域はウクライナが奪還した。

どこがどうなっているのか、とりあえずグーグルアースと組み合わせて状況を確認するようにしている。

なかでも蛇が大きなえものを飲み込んだようにふくらんだ先、急に細くなったところ(カホフカ水力発電所?)から上流左岸にザポリージャ原発がある。

これがいつも気になる。東電福島第一原発の二の舞にならぬよう、それだけを念じながらニュースを見ている――。

そのカホフカ発電所のダムが決壊した。新聞は、ウクライナ統治下の北側(右岸域)より、南側(左岸域)のロシア占領地で洪水被害が深刻なことを伝えている。

人間だけではない。ペットも、家畜も、野生動物も、大地も深刻な打撃を受ける。さらには、ダムから灌漑・飲料水の供給を受けていた暮らしも、環境も危機にさらされる。

川の水位が低下すればザポリージャ原発の冷却水にも影響が出かねない。戦争が長引くほどに、想像もできなかったような事態が起きる。しだいに影響が地球規模に拡大しつつある?

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