テレビなどでは、小名浜がいわきを代表する気温になっている。が、沿岸部はいわきのごく一部にすぎない。多くの人間が住んでいる内陸の気温は、ほんとうは市庁舎のある平のデータを使ってほしいのだが、気象台の公式記録では山田のデータしかない。山田のデータから夏井川流域の平地や渓谷の気温を類推している。
憲法記念日と日曜日が重なったきのうは、朝のうちに夏井川渓谷の隠居へ出かけて土いじりをした。途中、田んぼにはトラクターが稼働し、人間が動き回っていた。
神谷耕土は、平あたりでは田植えが早い地区として知られる。すでに済んだ田がある。代かきをしている田がある。田植えをしている田がある=写真上1。これが、平窪地区に入ると、田んぼは耕起されてはいるものの、ほとんどが乾いたままだ。
気温は未明から高かった。隠居の庭に立つと、地面から熱気が立ち昇ってきた。だめだ、こりゃ――土いじりは、午前中1時間ちょっと、午後は30分ほどと決める。「熱中すると熱中症になる。熱中しないこと」。毎年、暑い日にはこの呪文を唱える。それから首に手ぬぐいをまいて、ネギのうねの草むしりをした。
植えつけたネギ苗は、日曜日に見るたびに花芽を伸ばしている。子孫を残す方にエネルギーを取られたら、本体がちゃんと育たない。それでは困るので、花芽は見つけ次第摘む。きのうも20個前後を摘んだ。結局、植えつけた250本すべてから花芽が伸びたようだ。
草をむしり、花芽を摘むだけで1時間もかかった。午前中の土いじりはそれで終わり。上着はТシャツに薄いチョッキだけなのに、じんわり汗をかいた。ときどきはキュウリ苗に散水中のホースを取って、のどを潤す。意識してそうしないと、脱水症状を起こしかねない。わずか3日前まで、冬服で冬の体調だったのが、5月に入ったら急に夏の熱気にさらされた。体がついていかない。怠けながらやるのが一番いいのだ。
春、木の芽に先駆けて咲くアカヤシオの花を見に来る人は多いが、大型連休中の5月初旬、新緑の中で咲き出すシロヤシオを見に来る人は少ない。マスメディアもそこまでは目が届かない。いつも独り占めをした気分になる。
コロナ禍で外出(接触)自粛がいわれているさなかの大型連休だ。人込み(といっても、どこもいわきは閑散としているはず)を避けようとすれば、海へ、渓谷へと意識が向かう。
隠居の両隣、錦展望台と電力社宅跡には時折、行楽客が車でやって来た。それも、家族連れ、あるいは夫婦で、「3密」には程遠い。シロヤシオに気づいたかどうかはわからない。が、新緑を眺めてリフレッシュしたことだけはわかる。木々の緑にはそういう力がある。
とぎれることのない渓流の音にまじって、時折、「フィー、フィー」と澄んだ声が響く。カジカガエルが歌いだした。すると、夏鳥のオオルリも対岸の森に到着して、「ピールーリーリー」とやりだすにちがいない。
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