★『残丘舎遺文 八代義定遺稿集』(八代義定遺族会、2001年)
大正時代、牧師として磐城平に赴任した詩人山村暮鳥の理解者・協力者である八代の遺稿集。考古・歴史研究家で、地元・鹿島村(現いわき市鹿島町)の村長も務めた。吉野義也(三野混沌)と若松せいの結婚の労をとった。遺稿集には、八代所蔵のクロポトキン『パンの略取』などを借りたい――といった内容の、せいの手紙が収録されている。
★佐藤久弥『山村暮鳥と磐城平』(鏃出版、1992年)
いわき市内の高校教師をしながら地域文化の研究、とりわけ磐城平時代の山村暮鳥、同時代の詩人猪狩満直を研究した。20代後半に出会って40年。1年に何度か酒席を共にする、あるいは職場に電話がかかってくる、という程度のつきあいだったが、会えばいわきの文学について語り合い、教えられた。
★詩集『阿武隈の雲』復刻版(詩季の会、1994年)
吉野せいの夫、詩人三野混沌(吉野義也)の詩集。開拓農民として、いわき市好間町の菊竹山で一生を終えた。
★堀川正美『枯れる瑠璃玉
詩集1961―1970』(思潮社、1971年再版)
堀川の詩には生物がしばしば登場する。蝶(ちょう)でいうと、アイノミドリシジミやキマダラルリツバメ、ヒメジャノメなど。単に一般名称の「蝶」や「チョウ」ではなく、個別・具体の種名が並ぶ。植物も、動物も――。
この詩集は家の中でなぜか消えては現れ、現れては消える、ということを繰り返している。東北地方太平洋沖地震で家の本棚から本が雪崩を打ったとき、どこかにまぎれこんでいたのが出てきた。断捨離をして、本棚に戻し終えたら、またどこかへ消えた。
それが、今年(2020年)元旦、茶の間の押入から出てきた。「ムラサキフウセンタケのとぶ胞子」「暗い菌類の帝国はつづく」「菌が 闇のなかであかるむ ほのかにまたたく」「すると八月/タマゴタケのきのこ/たちあがる第一日」といった菌類関連の詩句に出合う。“文化菌類学”の関連図書の1冊として、目の前の本棚に据えた。
★松田松雄『四角との対話』(回無工房、2015年)
松田が昭和54(1979)年、いわき民報に「四角との対話」という題で1年間、週1回連載した。画家としての内面の軌跡を吐露した私小説的美術論。松田が出稿する前、担当ではなかったが、個人的に彼と対話しながら原稿の事前校正をした。それから36年後の2015年、娘の文さんが電子書籍化した。頼まれて、「あとがき」を書いた。オンデマンドで紙本も出版された。
★林香里『オンナ・コドモのジャーナリズム ケアの倫理とともに』(岩波書店、2011年)
東日本大震災の直前に出版された。「マスメディア・ジャーナリズムとは異なった、より局地的で、かつ人間の関係性を基本に相対的な視点からつくられていくような“コミュニケーション的ジャーナリズム”を本書では『オンナ・コドモのジャーナリズム』と名づけ」る。震災の年から足かけ7年、いわき明星大(現・医療創生大)でマスコミとメディア社会について学生に話した。そのとき、参考書として勧めた1冊。
★NHK
ETV特集取材班『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社、2012年)
原発事故から2カ月後、ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」が放送され、総合テレビで再放送されるほど大反響を呼んだ。市民はこの番組で初めて、被曝の実態を知った。
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