急いで家からデジカメを持ち出し、スポーツモードに切り替えて連写した。動きの速い蝶(ちょう)で、撮れた6コマのなかでピントが合っていたのは、これ=写真=ともう1コマだけ。データを拡大して細部を見た。やっぱり美しい。
アオスジアゲハは、いわきの平地では普通に見られる。幼虫の食樹はクスノキ・タブノキ・シロダモなどで、照葉樹の北限でもある東北南部が分布の北限といわれていたのが、温暖化の影響で生息域を北へ広げているという。
2年前の2018年11月、昆虫が専門の仲間がいわき地域学會の市民講座で講演した。それによると、いわきは北方系の寒地性生物と南方系の暖地性生物がともに生きる混交地域だ。いわきの平地・里山・山地、河川・池沼・湿原などの四季に息づく昆虫・動物たちを観察・撮影していると、暖地系の北上・山地から平地への寒地系の適応など、混交度合いがいちだんと進んでいることがわかる、ということだった。
講演のなかで、モンキアゲハ、ツマグロキチョウ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ツマグロヒョウモン、ホソバセセリ、チャバネセセリなどとともに、アオスジアゲハが年々、北上していることにも触れた。
10年前、やはり同じ地域学會の先輩(元高校教諭)に聞いた話では、浜通り北部の相馬あたりでもアオスジアゲハが見られるようになった。日本自然保護協会の「自然しらべ2011 チョウの分布 今・昔」報告書によると、すでに太平洋側では岩手県南部以南に分布し、日本海側では秋田県境に近い青森県沿岸地域で確認されている。
コロナ禍の影響で家にいる時間が増えた。行政区の役員をしているので、年度初めの4~5月は小学校の入学式に始まって、各種団体の総会・役員会などが続く。手帳を見たら、去年(2019年)は計23回、3密の場に顔を出している。今年はそれがない。
おかげで、在宅ワークの合間にちょくちょく庭へ出ては草木を眺めるようになった。念ずれば花ひらき、蝶もくる――。満開のイボタノキの花を見上げ、アオスジアゲハを思い浮かべたその瞬間、ホンモノが現れるという“奇跡”が起きたのだった。
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