四倉・柳生から上り、絹谷林道を下っていると、私と年の近い女性が数人、歩いていた。1人は脚の付いたフィールドスコープを担いでいる。車も2カ所に止まっていた。この林道ではめったにないことだ。大型連休中は人が入り込むから連休明けにしよう――そう連絡し合って、鳥好きが集合したのだろう。
石森山はバードウオッチングにはもってこいの場所。私も若いころは平日に単独、あるいはカメラマンと、休みの日には子供と遊歩道を巡った。1メートルほどの至近距離でキビタキの雄と出合ったこともある。
間もなく愛鳥週間が始まる(5月10~16日)。南から渡って来た夏鳥たちが愛の歌をうたいはじめる。石森山を経由したのは、実はバードヒアリングのためだった。サンコウチョウは、キビタキは、クロツグミは――と期待したが、「ケキョケキョケキョ」のウグイスの谷渡りしか聞こえなかった。
外出自粛は、家から一歩も出るなということではない。人間と人間の接触自粛のことだから、マスクをしてソーシャルディスタンス(2メートルの距離)を保てば、外歩きだって問題はない、と私は思っている。
ウオーキング(散歩)、ジョギング、バードウオッチング、釣り、サイクリング、土いじり……。私がするのは庭の草花を眺めながらの歯磨き、隠居での土いじり、そして車中からのバードウオッチングとヒアリング。これだけでもいいストレス解消になる。
大型連休中はほとんど家にいた。気晴らしを兼ねて車で出かけると、ウオーキングをしている人によく出会った。なかでも、夏井川の堤防はジョギングとウオーキングの絶好のコースだ=写真。コロナ以前は朝か夕方に多かったが、在宅勤務、そして連休が重なった今年(2020年)は、日中によく見かけた。それも、老・若を問わずカップルが多かった。
人間は、巣ごもりには長く耐えられない。精神的な酸欠を引き起こす。それを解消するためのウオーキングなのだ、ということはよくわかる。一方で、日中の大半を歩いている人もいないわけではない。
毎週日曜日、夏井川渓谷の隠居へ行く。このごろはポツンと一人、渓谷の道路を歩いている人がいる。同じ人だ。渓谷が始まる高崎で目撃し、江田ですれ違い、隠居のある牛小川で後ろ姿を見かけた。時折、手に持ったものを見ている。たぶんスマホだろう。それを見ながら渓谷を行き来している、としか思えない。高崎と牛小川の間だけでもざっと8キロはある。「歩く人」だ。
そう、「歩く人」だけではない。自分の家の周辺でごみを拾って歩いている人もいる。「拾う人」とも何度かすれ違った。
ドクターストップがかかって8年近く、すっかり足がなまってしまった。先日、薬をもらいに行ったら、「暖かくなったので、少しは散歩もいいですよ」という。まじまじとドクターの顔を見返した。少しずつ「歩く人」になるか。
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