2020年8月26日水曜日

いわきの「ナラ枯れ急増」

 きのう(8月25日)の夕刊いわき民報は、いわき市内のナラ枯れの実態を1面で報じていた=写真。ナラ枯れの経緯・問題点がよくわかった。

私は、記事を読んで、いわきの山はこれからさらに“茶髪”になる――そう思った。ナラ枯れが水源地帯に及べば水害を増大させる要因になる――そうも思った。

半世紀近くいわきの自然をウオッチングしている。そんな人間の直感のようなものがはたらく。3・11を経験したことも大きい。

あり得ないことがおきるのではなく、あり得ないと思いこんでいた想像力をはるかに超える自然現象、人間にとってはときに大災害がおきる。杞憂(きゆう)ではもうなくなった。去年の台風19号を想起すればわかる。

民有林に限ってだが、去年(2019年)はいわき市内で110本ほどだったナラ枯れが、今年は数百本に急増したという。景観、生態系への影響にとどまらず、「倒木、水源かん養機能の低下などから土砂災害などにつながる危険性が懸念されている」という。

国有林はどうか。磐城森林管理署のホームページには、ナラ枯れの情報は見当たらない。被害がない、ということなのだろうか。福島県内の森林は、国有林42%、民有林58%だそうだ。ナラ枯れが広範囲に及べば、国有林も被害を免れない。それだけ各流域の土砂災害・水害の危険性が増す。市民の生命・財産にかかわる話だ。国有林を含むナラ枯れの全体像を早く知りたい。

拙ブログで8月15、17日の2回、ナラ枯れについて書いた。月遅れ盆の入りに夏井川渓谷の隠居へ出かけた。そのとき初めて、山が“茶髪”になっているのに驚いた、それからは車で出かけるたびに平地の丘陵、郊外の里山と、どこがどう“茶髪”になっているかをチェックしている。

いろいろ話を聞くと、いくつかの拡散ルートが想定されるらしい。いわきの北隣・広野町でも“茶髪”が広がっており、市内の大久ではそちらから被害が拡大したという見方がある。

福島県いわき農林事務所・いわき市などによると、いわきでは①おととしの平成30(2018)年、田人地区ほかでコナラなど50本のナラ枯れが初めて確認された②去年は勿来・大久・小川などの中山間地のほか、平地の平・内郷・錦といった街中でも被害が相次いだ③今年は8月2日の梅雨明け後、市民から相次いで情報が寄せられた、という。

原因ははっきりしている。体長5ミリほどの小さな昆虫・カシノナガキクイムシ(カシナガ)が伝染病を媒介する。

雌がナラ菌やえさとなる酵母菌などをたくわえる「菌嚢(きんのう)」を持っている。雄に誘われて大径木のコナラなどに穿入(せんにゅう)し、そこで産卵する。菌が培養される。結果、木は通水機能を失い、あっという間に枯死する。カシナガの幼虫は孔道内で成長・越冬し、翌年6~8月、新成虫として一帯に散らばるので、被害もまた拡大する。

コナラやクヌギは、かつては薪(まき)や木炭に利用された。カシナガが好む大径木になる前に伐採・更新された。そして、原発事故。シイタケ原木としての利用も減った。3・11からでさえ10年近くたつ。阿武隈高地ではそれだけ年輪を増し、カシナガが好む太い木が増えている、ということになる。

   今後の見通しは――。「カシナガをそのまま放置すると、5年後に個体数が1万倍に増えるという研究データがある」そうだ。それがそのままナラ類を襲ったら、山はどうなるか。“茶髪”が“卒塔婆(そとうば)”になり、保水力が低下する。土砂が崩壊する。洪水を引き起こす。私にはそんなイメージしか浮かばない。 

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