2020年9月24日木曜日

毒キノコが南からやって来た

        
 長梅雨のあとは雨なしの酷暑が続いた。梅雨キノコは順調だったろうが、秋キノコはどうか。今までの例だと、秋の前半は酷暑と少雨で不作、10月に入ってから、ということになるのかもしれない。

いわきキノコ同好会(冨田武子会長)は年末に総会・懇親会を開く。懇親会は情報交換の場でもある。「秋キノコの発生が10日から15日ほど早まっている」「全体的な傾向としては、今までの経験則が通じなくなっているようだ」――年に一度、定点観測・採取による知見を学ぶ。

今年(2020年)のキノコ界はどうか。7月下旬に思わぬところ(こけむした岩場)でアミタケと遭遇した。アミタケは主に9~10月に発生する。梅雨期にも、それ以外の時期にも現れる。震災前の記録を見ると、梅雨期の採取は9~10月に次いで多い。今年、梅雨キノコは順調だったのでは、と推測するワケがこれ。

それに比べたら秋キノコは期待できない、風の便りも届かない、と思っていたところへ、友人から電話が入った。「家の裏にキノコが生えていた。シメジか。現物を持って行く」

届いたキノコは、傘の裏がひだではなく管孔(かんこう)だった。「シメジではないね、イグチ系のキノコ」

あとで図鑑に当たるため、庭に広げて写真を撮る=写真上1。傘の色や柄の形などもわかるように並べる。ニガイグチの近縁種にウラグロニガイグチがある。それらしかったが、断定は避ける。ウラグロニガイグチは、人によっては食中毒症状を起こすので、最近は毒キノコに分類されている。

それから間もない土曜日(9月19日)、いわき民報に毒キノコのオオシロカラカサタケの記事が載った=写真上2。

オオシロカラカサタケは南方系のキノコで、日本では関西を中心に分布している。同好会の冨田会長によると、いわき市内ではこれまで、ハウス内での発生は確認されていたが、野外では未確認だった。それが初めて、泉町の住宅の庭やナス畑で確認された。中毒例が非常に多いキノコだという。

昆虫が専門の仲間によれば、いわきは寒地性生物(北方系)と暖地性生物(南方系)がともに生きる混交地域だ。いわきの平地・里山・山地、河川・池沼・湿原などの四季に息づく昆虫・動物たちを観察・撮影していると、暖地系の北上・山地から平地への寒地系の適応など、混交度合いがいちだんと進んでいるという。

北上中のものは、甲殻類ではクロベンケイガニ。茨城県の大洗あたりが北限だったのが、いわきでも見られるようになった。いわきを北限とする蝶のアオスジアゲハ、モンキアゲハ、ツマグロキチョウ、ウラギンシジミ、ムラサキシジミ、ツマグロヒョウモン、ホソバセセリ、チャバネセセリなども、年々分布を北に広げている。

地球温暖化の影響で、今まで姿を見せなかった南方系のいきものが、いわきの海で、山野で確認されるようになった。オオシロカラカサタケはその一例。いわきをエリアにした“南北混交”の実態は絶えず流動している。古い混交観をアップデート(最新化)すること――それをまた実感した。

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