2020年9月6日日曜日

八茎巡検⑥ジャコウアゲハほか

                     
 野鳥のアオバト、変形菌のムラサキホコリの仲間、毒蝶(ちょう)のジャコウアゲハ(雌)――。八茎巡検で初めて出合ったいきものたちだ。

 千軒平溜池(ためいけ)を眼下にしながら、標高360メートルほどの林道を歩いていると、国有林の向こうから「ウワオー、ウワオー」という金属的な声が届いた。

 林道を「福岡」ナンバーの乗用車が通り過ぎたばかりだ。その車が事故でも起こしたか? 最初はそう思ったが、車のエンジン音ではない。人間の声でもない。とっさに思い浮かんだのがアオバトだった。

日本野鳥の会いわき支部(川俣浩文支部長)が5年前、支部創立50周年を記念して『いわき鳥類目録2015』を発刊した。いわき市内で撮影された鳥類246種と外来種6種が収録されている。それによると、アオバトはいわきでは留鳥だ。

私は鳴き声を聞いたことも、姿を見たこともない。が、夏井川渓谷(小川・椚平)に住む友人の話だと、椚平には生息している。予習を兼ねて、ネットの動画で鳴き声だけは聞いていた。それで、「ウワオー、ウワオー」の正体が推測できた。

 千軒平溜池から椚平までは、二ツ箭山をはさんでほぼ真西に7キロほどしかない。アオバトが八茎山中を徘徊(はいかい)していても(定留していても)不思議ではない。

 ちょうどそれと前後して、林道のへりの倒木を見たら、朽ちた表面に変形菌らしいものがある。ちゃんと写真を撮っておけばよかった――と、これはあとで悔やんだのだが、触れるとふわふわしていた。

 撮影データをパソコンに取り込んで拡大すると、針金、いや素麺(そうめん)、いや人の髪の毛のようなものが束になってウエーブしながら倒れている=写真上1。

もしかして変形菌(粘菌)のムラサキホコリの仲間? 色が紫ではなく、黒っぽいのは、立っているのではなく倒れているのは、老菌だから? ムラサキホコリの仲間だとしたら、写真集にあるような姿と初めて遭遇したことになる。

 最後は八茎嶽薬師の帰り、平地の仁井田川と県道小野四倉線沿いにある古刹(こさつ)・薬王寺の板碑などを眺めていたときだった。参道沿いの草むらにアゲハチョウの仲間が止まっていた=写真上2。キアゲハにしては開いた翅(はね)の色が薄い。銀色がかっている。白い紋様も独特だ。

 これも撮影データをパソコンに取り込み、ネットで検索したらわかった。ジャコウアゲハの雌だった。ジャコウアゲハは毒蝶だそうだ。幼虫は毒草のウマノスズクサを食べる。その毒が成虫になっても体内に残っている。ジャコウアゲハを食べたいきものは、二度とジャコウアゲハを襲わなくなるのだとか。

 野鳥から始まり、野草・菌類へと興味・関心が広がり、いわきの自然を“丸かじり”しなくては――と思い定めてもう40年になる。気が向いたときだけ歩き回ってきた人間なので、行きあたりばったりの出合いが一番の学習チャンスだ。今回もセンス・オブ・ワンダーにひたった。

 とはいえ、千軒平溜池、逢瀬の滝と、車から出たとたん、いきものの血(体液)に飢えたアブがわんさと押しかけてきたのには閉口した。その対策=虫よけも必要だったが、さいわい痛い目には遭わないですんだ。                                   (この項おわり)

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