2021年4月10日土曜日

マキ割りとジョウビタキ

                      
   これは真冬に目撃したことだ。後輩が自宅裏の空き地で機械でマキを割っていると、どこからともなくジョウビタキの雌が現れた。近くのマキの上に止まって、リズミカルに尾を振っている=写真上1。いつ行っても同じようにこの鳥が現れて、尾を振る。

 狙いはマキの中にひそんでいる幼虫。幼虫が出てきたら、後輩はジョウビタキにあげるのだという。

後輩が機械でマキを割る、ジョウビタキが現れる、ときには好物の幼虫にありつける。1人と1羽の間には、幼虫=食べ物を介した信頼関係ができていた。手乗り文鳥ではないが、ジョウビタキが手のひらに乘って虫を食べるようになったらおもしろい――幼虫プレゼントにはそんな魂胆もあるようだ。

 折も折、唐沢孝一『身近な鳥のすごい食生活』(イースト新書Q、2020年)=写真上2=を読んだ。

 ジョウビタキの食生活は? 後輩との関係をほうふつさせる記述がある。「越冬中のジョウビタキは、縄張り内に定着して生活しているため、同じ人と顔見知りになることがある。畑で農作業をしている人のすぐ横にまできて、じっと作業を見ていることがある。お目当ては土を掘り起こした時に出てくるイモムシやミミズなどだ」。農作業の代わりにマキ割りをする後輩とすっかり顔見知りになったのもうなずける。

 そのあとの文章に目を見張った。「ジョウビタキにしてみれば、自分の縄張りの中の人が小動物を掘り出してくれるようなもの。人を利用したオートライシズムである」

オートライシズム? 農作業中の「耕運機や他の動物の動きを利用して獲物を得る方法」のことだという。ネットで深掘りすると、ギリシア神話に出てくる「盗みの名人」アウトリュコスに由来することばだった。

 ジョウビタキ以外の鳥、たとえばハシブトガラスの食生活にも触れておこう。これだって人間のいい加減さにつけ込んだオートライシズムかもしれない。

「燃やすごみの日」には、生ごみを狙うカラスと人間の闘いが続く。わが家の前のごみ集積所では、わが家でごみネットを出し入れする。私が月曜日に出して、カミサンが木曜日に引っこめる。ずっとネットがあると違反ごみを置いていかれる。美観とマナー違反対策だ。

 ネットを張るのは、むろんカラス除けだが、ごみ袋にネットをかぶせただけでは効果がない。ネットのヘリをごみ袋の下に入れないと、カラスに簡単に引っぱり出される。生ごみが外から見える出し方も論外。人間が少しでもスキを見せると、カラスは生ごみを食い散らかす。

 わが家の前の集積所に現れるのはほぼハシブトガラスだ。「共食いも辞さない旺盛な食欲」の持ち主だそうだ。哺乳類のドブネズミから鳥類、ハ虫類・両生類その他、柿・米・豆類なんでも口にする。そんな食欲の持ち主だから、ごみ集積所は労せずして腹を満たせるえさ場に見えるのだろう。

夏鳥のツバメが南からやって来て、冬鳥のジョウビタキが北へ帰る時節。ツバメの食生活は?と見れば、これまたバラエティーに富む。ハエ・ミツバチ・アブ・テントウムシ・トンボ・羽アリなどを空中でつかまえる。いやあ、鳥たちの食生活はすごい。

0 件のコメント: