2021年4月20日火曜日

夏井の千本桜と川前のカツラ

        
 きのう(4月19日)の続き――。日曜日の朝、いわきの平地から阿武隈高地の上三坂(いわき市三和町)~小平(おだいら=平田村)~小野新町(小野町)と巡って、ちょうど昼、夏井川渓谷(いわき市小川町)の隠居に着いた。

 主に国道49号、同349号、県道石川鴇子(とうのこ)線、あぶくま高原道路、県道小野四倉線を利用した。走行距離は自宅までの分を含めて110キロ余り。山里の風景に慰められながらの運転だからよかったが、これが国道6号の往復だったらくたくたになっていたにちがいない。

 好間あたりまでは木々が芽吹き、ぽやぽやした産毛をまとって山がほほ笑んでいた。

 上市萱(三和町)から旧道に入り、「一杯清水」を横目に旧長沢峠を越えると、そこは標高500メートル超の山里、上三坂。ソメイヨシノとヤマザクラが咲いていた。山々はしかし、好間と違ってまだ冬の装いだった。

旧道を巡るのが目的なのか、歩こう会らしい一行とすれ違った。夜の強雨が収まってさわやかな青空が広がる朝、絶好のウオーキング日和になった。こちらもまたドライブ日和には違いない。

 阿武隈高地で標高が500メートルになると、もう準平原だ。阿武隈高地の地形を研究した故里見庫男さんに「残丘」というエッセーがある。いわき地域学會図書16『あぶくま紀行』に収められている。

 それによると、阿武隈高地は中生代白亜紀後期(8千万年前)に、山地全体が風化作用や河川の浸食などによってほとんど平坦化した。その後、汎世界的な地殻変動によって間欠的に隆起した。

 その結果、高地の東側(いわき市などの浜通り)は、河川の浸食が復活した。至る所にV字谷ができた。西側(田村市などの中通り)は、平坦化した穏やかな風景が広がる。所々に見える山は残丘。独立峰で、お椀(わん)を伏せたような形の山もある。代表格が平田村の蓬田岳(標高952メートル)だ。

平田村とはなだらかなアップダウンでつながる上三坂は、阿武隈の穏やかな風景の一角をなす。行政区分ではいわき市、つまり浜通りだが、地形的には中通りと変わらない。

平田村も上三坂と同じような標高に集落が形成されている。山々はほほ笑むところまではいっていない。平田ICからあぶくま高原道路を利用して小野町へ移動したが、こちらは標高がやや低くて440メートルほどだ。同町もまた山は半分眠っていた。

 渓谷への途中、夏井の千本桜を見た。満開だった=写真上1。コロナ禍のために「夏井千本桜まつり」は中止になったが、駐車場には何台かマイカーが止まっていた。河川敷の遊歩道を歩く人もいた。

 いわき市の川前町に下ると、山々はすっかりパステルカラーに染まっている。JR磐越東線の川前駅あたりで標高は280メートルほど。近くの夏井川の岸辺にカツラの大木がある。風が淡い緑色の葉を揺らしていた=写真上2。

渓谷の隠居に着く。隠居のあるあたりで標高は200メートルほど。V字谷の山の頂きは600メートル前後だから、垂直で400メートルの差はある。奥山もほほ笑んでいる。

谷の近くでは、なんと初夏の花のシロヤシオが咲き出した。渓谷へ通い始めて四半世紀。4月中旬にシロヤシオの花が咲くのを初めて見た。これには驚いた。やはり異常気象とか温暖化を思わないではいられなかった。

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