春は今年(2021年)、馬車ではなく特急列車に乗ってやってきた。いわきの場合、年が明けるとすぐきつい寒波に見舞われた。夏井川渓谷にある隠居のガス温水器が凍結・破損し、籠場の滝の上下流が凍った。これが、例年より半月以上早い、しかもまれにみる極寒(ごっかん)だった。その後は気温が高めに推移した。ソメイヨシノが早々と開花したのは、このときに休眠を打破されたからだ。
冬が寒ければ、白菜漬けは発酵が抑えられて長持ちする。が、このごろは漬けるとほどなく、白菜からしみ出た水の表面に白い膜が張る。産膜酵母だ。塩分濃度が薄かったり、保存温度が高かったりすると発生する。味が変わりやすくなるので、こまめに取り除き、早めに食べきること、とネットにはある。
切って漬けた白菜の量が半分以下になったとき、タッパーに詰めて冷蔵庫に移した。保存温度を低く抑える作戦だが、一度、産膜酵母に触れた白菜は、やはりタッパーのなかでも表面が白くなる。食べるときに洗い落とすので問題はないものの、味と色ができたてのときよりは落ちる。
この冬は甕(かめ)に白菜を漬ける―白い膜が張る―残りをタッパーに詰めて新しい白菜漬けをつくる―白い膜が張る、の繰り返しだった。去年もそうだった。
タッパーに詰めた白菜も残り3切れまでになって、カミサンが1切れを細かく刻んでバター炒めにした。白菜は漬け込んであるからやわらかい。塩味をバターの風味がほどよく包んでいる。ご飯のおかずにぴったりだ。古漬けを生き返らせる妙案ではあった。
残る2切れは水に浸けて塩分を抜いた。カミサンが同じように刻んで炒め、醤油で味を付けた=写真。これもご飯に合った。
間もなく糠漬けを再開する。それまでは市販の漬物とキュウリの古漬けでしのぐしかない。
去年は7月下旬から9月末までの2カ月間、ホーロー引きのキッチンポットに、お福分けと自家栽培の余りのキュウリを十字に組んで塩漬けにした。そのあと、あめ色になったキュウリを取り出し、レジ袋に入れて冷蔵庫に眠らせた。
夏はキュウリの糠漬け、冬は白菜漬け――。ご飯を食べるときにどちらかがあれば、ほかのおかずはなくてもいい。そして今、漬物の端境期を迎えた。
キュウリの古漬けを取り出して細かく刻み、さっと塩を抜いてご飯のおかずにしているのだが……。重しの圧でぺたっとなっているはずのキュウリが、小さいものほど原形を保っている。太いキュウリの間にはさまれて圧がかからなかったか。握るとグニュッとつぶれる。パリパリ感からは程遠い。
もったいないからと大小取り混ぜて古漬けにしたが、均質なものを漬けるべきだったか。
キュウリの古漬けはカミサンも義弟もあまり口にしない。私の「マイおかず」だが、このグニュッにはまいった。反省材料だ。
にしても、と自分のウデの未熟さを棚に上げて思う。白菜漬けにしろ、キュウリの古漬けにしろ、今までと同じやり方では失敗し続けるのではないか。家庭内でも気候変動に合わせて加工技術を改良する必要があるのかもしれない。
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