2021年4月19日月曜日

上三坂から小平へ

 平田村の北方(きたかた)というところに、「昔の主屋 白菊乃丘」という“店”がある。書画骨董その他、いろんな古いものを扱っている。カミサンがなにかで知って、「行きたい」という。いうことを聞かないわけにはいかない。きのう(4月18日)、朝のうちに家を出た。

 事前に場所を確かめ、グーグルアースで道順を頭にたたき込んだ。といっても、ルートは一つではない。

最初は夏井川渓谷の隠居へ行って土いじりをし、午後に山を越えて三和町上三坂から平田村へ抜けるコース、山を越えずに小野町までさかのぼり、あぶくま高原道路から平田村へ入って、村内の道路網を利用するコースを考えた。

前夜までは、そのどちらかのコースで行くつもりだったが、朝起きたら直接、上三坂経由で行った方がいいように思った。カミサンも同意した。

グーグルアースであれこれ道を探っているうちに、遠いとおい記憶がよみがえった。北方の先に小平(おだいら)郵便局や小平小学校がある。つまりは、ちょっとした集落になっている。子どものころ、そこへバスで行ったことがある。平田村と知ったのはずっとあとだが、「おだいら」という地名が、そのとき記憶に残った。

三和町上三坂はいわき市の北西端。そこにいとこが住む。母親は私の父の妹、父親は常磐交通の運転手で、まだいわき市になる前の平市から三和村へ転勤して、バス停そばの車庫兼社宅に住んだ。一家は上三坂に根を張り、義叔父も叔母もそこに骨をうずめた。

子どものころ、祖母と何回か泊まりに行ったことがある。確か小学6年生の夏休みのとき(月遅れ盆)だった。じゃんがら念仏踊りを初めて見て衝撃を受けた。

当時、常交の路線バスは上三坂を起点にすると、小野新町、平、小平行きなどがあった。これはしかし、子どもだった私が乗って記憶しているだけで、ほかにも毛細血管のように、あちこちにバス路線網が張り巡らされていたのではなかったか。

「昔の主屋」へ行って戻るだけではつまらない。小平にも行きたい。となれば、上三坂から直接出かけ、そのあと小平経由であぶくま高原道路を利用して小野町へ抜け、そこから夏井川渓谷の隠居へ下る、というルートがいい。一種のセンチメンタルジャーニーだ。

 三和町の直売所・ふれあい市場で買い物をしたあとは、旧道を利用して上三坂へ抜け、バスの車庫兼社宅があったところ(今はバス駐車場)=写真上1=を記憶の起点にして、国道349号経由で「昔の主屋」を訪ねた。

「昔の主屋」は、江戸時代の造り酒屋だった古い建物と広い敷地を利用した“古物のテーマパーク”だった=写真上2。スタッフによれば、“開園”するのは土・日・月らしい。ありとあらゆる古物が展示されている。中身をうんぬんする前に、その物量に圧倒された。

 周囲は、いかにも阿武隈の山里らしいたたずまいをしている。浜通りと違って丘陵に囲まれながら水田が広がる、なだらかな高原といった風情だ。サクラは咲いていたが、木の芽はまだ冬の眠りから覚めずにいた。

 私は、子どものころの記憶と対話しながら、しかしほとんど初めて同然の小平への道を進みながら、60年以上前、このルートで小平~上三坂を往復したのだと確信していた。ストリートビューでほかの道もたどったが、この道が一番行き来しやすかったからだ。三坂と小平、その手前の北方とは日常的なつながりがあってもおかしくない、そんなことも思った。 

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