2021年5月24日月曜日

令和2年のキノコの線量

        
「キノコに降りかかった原発災害」には終わりが見えない。いわきキノコ同好会は東日本大震災と原発事故が起きた平成23(2011)年の翌年から、会報に公的機関などで測定されたキノコの放射線量を掲載している。

 同24(2012)年に発行された第17号が最初で、キノコに関する行政の対応などが載る。

次の第18号では、冨田武子会長が「キノコに降りかかった原発災害Ⅱ」と題して、栽培・天然両方のキノコについて、いわき市とNPO法人が測定した放射線量結果(平成23年4月1日から12月31日までの680件)を一覧表にした。

それらを考察した結果として。①同一地域内の産物でも放射能値に差がある。同様に、同種であっても値が極端に異なるものがある②食材であるキノコをゆでて水洗いしてから測定すると放射能は激減する。ただし、風味は失われる③傾向として原発に近い方の場所や山間部のキノコは放射能値が高い傾向がみられる――ことがわかった。

今年(2021年)3月末に最新の第26号が発行された。「キノコに降りかかった原発災害()」に令和2(2020年)に測定されたデータ301件が載る。

「匂いマツタケ、味シメジ」のシメジを代表するものといえば、ウラベニホテイシメジ。去年のデータ(キログラム当たり)でも、225ベクレル(三和)、304ベクレル(遠野)、2887ベクレル(三和)と高いものがある=写真上1。

 ウラベニホテイシメジに似て誤食されやすい毒キノコのクサウラベニタケはけた違いに高い。6万1407ベクレル(川内村)、5089ベクレル(三和)。「キノコに降りかかった原発災害Ⅱ」以来、このクサウラベニタケが決まって測定に持ち込まれる。そして、線量がずっと高い。

なぜ毒キノコを? 毎回、疑問に思っていたのだが、ここにきてはたと気がついた。土壌表層の線量をチェックするには最適のキノコではないか。ウラベニとクサウラは姿だけでなく、同じ場所に、同じ時期に発生する。クサウラは土壌表層の枯れ葉から出るから、そこにまだセシウムが滞留していることがわかる。

それは次のようなことで説明がつく。一昨年(2019年)の同好会の勉強会で学んだことだ。事故から7年たった2018年時点でも、キノコの線量に大きな変化はなかった。理由は、森に降ったセシウムをキノコの菌糸が集めてくるからだという。

キノコを植物にたとえると、地中に根(菌糸)を張り巡らして栄養を集め、子孫を残すために花(子実体)を咲かせて種子(胞子)を拡散する。その過程でカリウムに似たセシウムを取り込む。セシウムの吸収―放出―吸収という循環が森の中で行われているために、キノコは何年たっても線量が高いまま、ということになる。

セシウム134の半減期はおよそ2年、同137は30年。134の半減期が過ぎたことから、線量自体は低減傾向にあるとはいえ、まだ野生キノコは食べられない。

 一方では、ナラタケモドキ(三和)、ハタケシメジ(同)、茹でたウラベニホテイシメジ(田人)などは不検出、といった例もみられる=写真上2。これはしかし、たまたまそこの場所の線量が低かったということなのだろう。

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