2021年5月3日月曜日

ここにも向こうにも雄のキジ

        
 平市街の東端・鎌田で左に大きくカーブした夏井川は、そのあと蛇行して太平洋へ向かう。右岸・山崎、左岸・中神谷にそれぞれ、サッカーコートが2面も3面もとれるような河川敷が広がる。最近、除草とヤナギなどの木の伐採が行われて、土砂がむきだしになった。

 例年より早く春がきて、4月下旬にしては初夏を思わせる天気になった。広い河川敷にも草が萌え、日ごとに草原の様相を呈している。

 臨時休館になる前の総合図書館からの帰り、いつものように夏井川の堤防を通ると、中神谷の“草原”になにやら黒いかたまりが二つある。雄のキジだった。1羽は前に目撃した同じ川岸に、もう1羽は堤防の近く、サイクリングロードのそばにいた。

 普通のデジカメで向こうのキジとこちらのキジを撮る。あとで拡大したら、川岸のキジは「ケーン、ケーン」と鳴いて母衣(ほろ)打ちをしているところだった=写真上。堤防近くのキジは、車を止めた私に気づいて体をすくめている=写真下。

 以前はヨシも茂って隠れる場所があちこちにあった。今年(2021年)は見晴らしがよすぎる代わりに、ライバルからも簡単に見つけられる。向こうとこちらまではざっと100メートルの距離があるので、縄張りをめぐってケンカになることはない。が、どこかに見えない境界があるはずだ。

 朝晩、この堤防を散歩していたころ、初夏に雄のキジがよく鳴いた。1羽や2羽ではきかない。いったい夏井川の河川敷に雄のキジが何羽いるのか、“試算”したことがある。そのときの拙ブログ(2008年5月23日)を要約して載せる。

――1羽が鳴くと、必ず少し離れたところで別の1羽が鳴く。それが下流の方まで延々と続く。肉眼では黒い粒でしかないキジも、双眼鏡で見ると、赤い肉だれと気品のある緑黒色の体がよく分かる。対岸ばかりでなく、こちら側に来ているときもあるから、川の両岸が同じオスの縄張りとみてよい。

ある朝6時ごろ、いつものように堤防の上を歩いていると、右岸の3カ所からキジの鳴き声が聞こえた。音源を探ると1羽は畑の真ん中に、ほかの2羽はそれぞれ離れて河川敷の砂地に近い草むらにいる。肉眼でもはっきり見える。

3羽の距離を歩いて測った。AキジとBキジの間は240歩(一歩90センチとして216メートル)、BキジとCキジの間は100歩(同じく90メートル)である。真ん中のBキジの縄張りは、中間で線引きをすると108メートル+45メートル=153メートルになる。

少し余裕をもたせて200メートルごとに縄張りがあるとすると、現にその程度の間隔で「ケーン、ケーン」と鳴いているのだが、雄のキジは1キロメートルに5羽、河口まで4キロメートルとして25羽がそれぞれ縄張りを持っていることになる。もう少し狭めて150メートルごとにオスがいるとすると、33羽だ。これはいくらなんでも多いか――

こんな試算は科学的ではないかもしれない。しかし、縄張りの面積はともかく、その面積の一端=線的な区切りでいえば、実測に近い。けっこう密になっている印象だった。

あの雄の華麗な体色はしかし、草むらにうずくまると周りの緑にとけこんで姿がわからなくなる。助手席に置いてあるカメラを取るために視線をはずしたら、どこにいるか見つけるまでに時間がかかった。

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