5月17日に新しい朝ドラ「おかえりモネ」が始まった。気象予報士をめざす若い女性の物語だという。東京からテレビでおなじみの気象予報士が山里にやって来る。当座の天気の変化を言い当てて、主人公の女の子や周りの人々を驚かせる。
いきものは、気象や地形・地質が培った風土のなかで命をつないでいる――そう思っている人間には、気象予報士の、この「観天望気」が神ワザに感じられた。同じ朝ドラでも、今回は「科学」の視点が入っている。これまでとは違った楽しみがある。天気の勉強にもなるにちがいない。
新しい朝ドラの始まりと前後して、先に気象庁が発表した生物季節観測の大幅リストラが撤回され、環境省などと継続することになった、という記事が新聞に載った。
去年(2020年)11月、気象庁は半世紀以上にわたって続けてきた鳥や虫23種目、植物34種目のうち28種目の生物季節観測を2020年でやめると発表した。継続するのは桜(ソメイヨシノ=開花と満開)、カエデ(紅葉と落葉)、イチョウ(黄葉と落葉)、梅とアジサイ、ススキの開花の6種だという。
すると、専門家の団体や学界から、「歴史のある観測データが途絶えてしまう」「温暖化の影響を知るのに役立つ」などと、観測の継続を求める声が相次いだ。そこでリストラを撤回し、気象庁と環境省が約70年にわたる観測データを生かしながら、対象外となった動植物についても試行的に調べていくことにしたそうだ(朝日)。
雨降って地固まる。気象庁が3月末に出した報道発表資料をプリントアウトして読んだ=写真。
それによると、気象庁と環境省、国立環境研究所が連携して試行調査を始める。その骨子は①これまでの観測データとの継続性を保った「調査員調査」②生物を通じて四季を感じる文化的な視点から広く一般市民に参加してもらう「市民参加型調査」――の二つ。まずは市民参加型調査につながる試行調査を始め、次に調査員調査につながる試行調査を立ち上げるという。
観測継続を訴えていた日本自然保護協会も歓迎の声明文を発表した。「四季とともに動植物が変化する日本の自然は、人々の心の豊かさをも育みます。また、近年、深刻化する気象変動対策や生物多様性保全の課題においても、長期モニタリングデータはその重要性を増しています」
いわき市内では長い間、小名浜測候所で生物季節観測が行われていた。その観測データが平成20(2008)年10月1日、行政機構改革による無人化で途切れた。サクラに関しては地元のまちづくり団体が元測候所職員の協力を得て開花宣言を行っている。これなどは「調査員調査」の先行例といえるだろう。
私は現役のころ、小名浜のデータを利用して季節のコラムを書いた。いわきの自然と人間の関係を考えるうえで、ひとつの目安になる。それだけではない。蓄積されたデータからいわきの自然環境の変化が読み取れる。とても大事なデータだった。
その延長で勝手に「市民参加型調査」をしている。前にも書いたが、「初めて蚊に刺された日」を記録している。平均すると5月20日が目安だが、今年(2021年)は5月14日だった。
観測データを積み重ねることで自分の生活圏の環境変化がわかる。「おかえりモネ」でも生物季節観測の話が出てくるかもしれない。
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