2021年5月1日土曜日

カツオを食べきる

 近所の医院へ薬をもらいに行くと、4週間前に採血した結果の説明を受けた。数値的には大きな変化はなかった。

 尿酸値が久しぶりに「基準範囲」に収まっていた。「プリン体ゼロの焼酎に切り替えたので」というと、「飲まないのが一番」という表情でドクターが苦笑いした。

 採血時、血糖値がやや高かった。「油ものは週2回くらいに」といわれたので、煮物が増えた話をすると、「要は食べ過ぎないこと」なのだとか。このへんのことは患者と病気とドクターの“三者会談”でやっていくしかない。「飲み過ぎないこと」も含めて。

 昔、カツオが好きで毎日刺し身を食べているうちに痛風になった後輩がいる。その告白を聞いて以来、私は、カツ刺しは日曜日だけにしている。プリン体が気になるのは、アルコールとカツ刺し、ときどき食べる焼き鳥のレバー、それぐらいか。

 そのカツ刺しが最近、決まって余るようになった。同じマイ皿を持って行くので、盛られる量は決まっている。義弟を含む3人で食べるのも同じ。

 なのに、3分の1は余る。とりあえず、大根の「けん」をかぶせて冷蔵庫に入れ、翌朝、1切れずつ醤油につけて熱々のご飯にのせ、海鮮丼の気分を味わう。その残りを、今度は夜、「にんにく揚げ」にしてもらう。酒のつまみだ。

 先の日曜日(4月25日)は、小名浜に初水揚げされたカツオを食べた。やはり余った。翌日、「にんにく揚げ」になって出てきた。これも余った。するとさらに翌日、「にんにく揚げ」を醬油で煮てほぐした「さいころかつお」が食卓に上った=写真。うまかった。まったく生臭さがない。刺し身とも、にんにく揚げとも異なる味になっていた。

 いわき地域学會が市から受託してまとめた『いわき市伝統郷土食調査報告書』(1995年)には、カツオ料理がいくつか載る。鰹の「沖だけ」「粗汁」「焼きびたし」「刺し身のお湯かけ飯(めし)」「煮和膾(にえなます)」、そして「鰹味噌(みそ)。

報告書の校正を担当したが、カツオは刺し身一本やり(粗汁はときどき、魚屋さんから粗をもらって来て、カミサンがつくった)だったので、鰹料理の多彩さを実感することはなかった。

「鰹味噌」は切り身を煮つけ、さらに火で焼いてみじんにし、やはりみじんにした生姜(しょうが)を加えて味噌を混ぜ合わせたものだという。「さいころかつお」はみじんではないが、刺身の再利用法としては「鰹味噌」に近い。「かつおフレーク」「かつおそぼろ」もそうだろう。煮つけているうちに身がほぐれていく。

わが家では①日曜日=刺し身②月曜日=海鮮丼・にんにく揚げ③火曜日=さいころかつお――と、日替わりで味の違うカツオを楽しむことができるようになった。

報告書の「ひとくちメモ」にこうある。「磐城では鰹がよく捕れるとはいえ、毎日鰹の刺身では飽きがくるし、刺身自体が残ってしまう。そこで残った鰹の食べ方が色々考え出されてきた。この鰹味噌も(略)鰹のお湯かけ飯同様、残り物の再利用の料理である」

「さいころかつお」は残り物の再利用の再利用だ。捨てずに食べきる。これが日常食の鉄則。3日続いてカツオを口にしたとしても、量はマイ皿に盛られた分だけだ。プリン体を気にするほどではない。 

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