日曜日(5月23日)の朝、夏井川渓谷の隠居に着くと、玄関前にレジ袋が置いてある。キュウリのポット苗が入っていた=写真。書き置きから近所のKさんが持ってきてくれたものだと知る。昔野菜(在来作物)の「小白井きゅうり」だ。
ざっと25年前、隠居の庭に小さな菜園を“開墾”した。主に三春ネギを栽培している。ほかに「少量多品種」を頭においていろんなものをつくった。
原発事故のあとは元気が萎(な)え、三春ネギのほかはタカノツメ、キュウリ、ときどきナスを2本植える程度になった。週末だけの土いじり、そして40代から70代に年を重ねたことも大きい。
前の日曜日(5月16日)、キュウリの苗を植えるつもりで土を耕し、肥料を混ぜ込んで支柱を立てた。
後輩からもらったハバネロのポット苗があったので、それもほぐして植えた。「イノシシは、ネギにはまったく口をつけない」。後輩にその話をすると、「これもイノシシ除けに」と、持ってきてくれた。後輩はハバネロの国で暮らしたことがある。
以前、「道の駅ひらた」の店頭にハバネロの鉢植えが飾ってあった。さわると皮膚がかぶれる――そんな注意書きが添えられていた記憶がある。
たまたまハバネロを試作した農家がある。道の駅に卸したが、辛すぎて全く売れなかった。ではと、とことん辛い加工品の開発を進めたところ、クチコミで評判を呼び、今や「日本一辛い村」をセールスポイントにするまでになった、とか。ソフトクリームの「ハバネロソフト地獄級」や「生地獄カレー」があるらしい。
それほどの超激辛なら、イノシシはもちろん近寄らない。が、人間も収穫時には素手で摘んではいけない、必ず手袋着用で、となるのだろうか。
キュウリの話に戻る。わが家から車で5分ほどのところに昔ながらの種屋さんがある。キュウリ苗は最近、この店から買う。ホームセンターより値段はいい。それだけのことはある。実の生(な)りが違う。
土曜日にポット苗を三つ買った。Kさんからもらった小白井きゅうりは五つ。頭の中の設計図を、小白井きゅうり中心に書き換える。
小白井きゅうりは、収穫適期で長さが13センチ・太さ3センチほどだ。ずんぐり形で、長さ20センチ・太さ8センチになっても肉質はみずみずしい(『いわき昔野菜図譜』2011年)。
冷ました塩湯に重しをのせて10時間ほど漬けた「どぶ漬け」が図譜に載っている。昭和30年代までは小白井に限らず、阿武隈高地一帯で似たようなキュウリが栽培され、どぶ漬けがつくられたのではないか。子どものころ食べたキュウリはずんぐりしていて、やわらかかったから、「昔きゅうり」の一種だったのだろう。
三春ネギも昔野菜、小白井きゅうりも昔野菜。伝統的に三春ネギを栽培してきた渓谷の小集落では、ローカルな野菜こそがふさわしい。小白井きゅうりを4本、市販のキュウリを2本植えた。残り各1本はわが家へ持ち帰り、夏の日よけを兼ねて台所の南の軒下に植えた。
ただ、キュウリ苗8本がすべて無事に育ち、実をつけ始めたら……。今からレシピとお福分けのリストをつくっておかないといけないか。
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