2021年5月21日金曜日

在来種おびやかすチョウ

        
 去年(2020年)9月末のことだ。朝、庭に出て歯を磨いていたら、シソの葉に隠れるようにして止まっているチョウがいた=写真上1。後ろの翅(はね)に赤い斑紋が付いている。こんな鮮やかな紋様のチョウは見たことがない。ネットで調べると、タテハチョウ科のアカボシゴマダラだった。国立環境研究所の「侵入生物データベース」に情報がアップされている。在来種をおびやかす厄介者らしい。

去年10月4日の拙ブログでアカボシゴマダラについて書いている。それを抜粋する。

――アカボシゴマダラの自然分布はベトナム北部~中国南部・東部~朝鮮半島などで、別亜種が奄美諸島と台湾に分布する。日本列島では1995年、突然、埼玉県で確認された。その後、関東南部で多発・定着するようになった。2010年以降では関東地方北部や山梨県、静岡県、福島県でも見られるようになった。

自然の分布域から飛び離れていること、突然、出現していることから、マニアによる「ゲリラ放虫」の可能性が大きいという。幼虫はエノキの葉を食べる。日本の国蝶オオムラサキやゴマダラチョウ、テングチョウなどと競合する。ゴマダラチョウとの雑種も生まれている。拡散させてはならない防除対象種だ。

地球温暖化による北上は自然現象だからしかたがない。しかし、人為的な放蝶による生態撹乱(かくらん)は、あってはならないことだ。温暖化そのものが人間の活動の結果には違いないが、ゲリラ放虫は生態系に対する犯罪といってもいいのではないか――

先日(5月16日)、県紙に「外来のチョウ生息拡大/本県でも確認、在来種に悪影響も」という見出しで、アカボシゴマダラの記事が載った。それで去年秋、わが家の庭に現れたことを思い出したのだった。

 記事によると、いわき市小名浜の海岸近くに生える高さ約1メートルのエノキで5月12日、3センチほどのさなぎが羽化する様子が確認された。アカボシゴマダラの幼虫はエノキの葉を食べる。数が増えすぎると、在来種とエノキの葉の取り合いになる恐れがある、ともあった。

 このところ、よく平の石森山へ行く。同山は平市街地に最も近い、標高225メートルの里山だ。フラワーセンターがある。雑木林内には遊歩道が張り巡らされている。その遊歩道を散歩する。

 林道から遊歩道に入ってすぐのところに「どんぐり平」がある=写真上2。昔はクヌギの幹に「樹液酒場」ができていた。ほとんどが人為的なものだった。そこへ昼はオオムラサキやスズメバチが、夜はカブトムシやクワガタが現れた。樹液をなめてみたことがある。わりと冷たくて甘酸っぱかった。なるほど、これが虫たちの滋養源か――。

オオムラサキがいるということは、幼虫が葉を食べるエノキも同山には生えているということだ。もしかしたら、そこで繁殖・羽化したアカボシゴマダラがふもとの神谷の里へ降りてきた、ということは考えられないか。そうだとしたら、エノキの葉の奪い合いが起きている? 今度、石森山へ行ったら、アカボシゴマダラにも注意して歩こう。

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