2021年5月28日金曜日

林道で車とすれ違う

                    
   車で石森山へ行き、遊歩道を散歩するようになってから、間もなく2カ月。とにかく歩かないと足腰が衰える。老化のスピードを抑えないと――。15分から始まって、20分、たまに25分くらい歩くこともある。

 前は夏井川の堤防をフィールドに、朝晩、散歩をした。そのときの時間の感覚(40分ほど)を参考にする。とりあえず半分の3000歩が目標だ。

 そんなレベルだから、アップダウンの激しいコースはだんだん避け、傾斜はあってもほとんど気にならない、すり鉢の底のようなところを選んで歩くようになった。

 火曜日(5月25日)は、午後遅く出かけた。普通車1台がやっとという狭い林道を利用して、石森山のふところに入る。ところどころ道幅がふくらんでいる。対向車があれば、そこですれ違う。

4月は、対向車はゼロだった。大型連休をはさんで5月に入ると、毎回、車とすれ違うようになった。「紅葉マーク」がほとんどだが、なかに若い人も交じる。フィールドスコープを持った女性が林道を歩いていたこともある。狙いはたぶん、南から渡ってきた夏鳥のサンコウチョウやオオルリ、キビタキたち。

林道沿いの遊歩道入り口にも駐車できるくらいのスペースはある。いつもの場所に車を止めようとしたら、珍しく別の車が止まっていた。

近くのスペースに駐車して森の中に入る。週末に降った雨の影響で、遊歩道沿いのせせらぎが水量を増していた。森の底だから湿気がこもりやすい。雨が多くなると、菌類の動きが活発になる。

道端の伐採木からクロチャワンタケらしいものが出ている。地面からはベニタケの仲間らしいものが=写真。あとで写真と図鑑を照合すると、チギレハツタケに似ていた。「成熟とともに縁部から表皮が離れ、白色の肉があらわれる」とある。確かに一部で表皮がはがれて白くなっている。発生は夏から秋、場所はシイ・ナラ・カシなどの広葉樹林内の地上、というのも符合する。

キノコは、見た目だけではなかなか特定できない。顕微鏡で胞子を調べるようなレベルの研究者でもないので、結局「らしい」という表現になってしまう。

菌根菌(キノコなど)は「陸上植物の約八割の植物種と共生関係を結んでいる。菌と植物の共生である菌根が地球の緑を支えていると言えるだろう」。齋藤雅典編著『菌根の世界――菌と植物のきってもきれない関係』(築地書館、2020年)を読んで以来、森を見る目が少し変わった。

花は花、キノコはキノコとばらばらに、単独に存在しているのではなく、関係しあって生きている。樹木も野草も菌類もつながっている。そんな考えが頭の隅っこに宿り始めた。

それでも、実際には一つひとつのいのちと向き合うしかない。4月は花がよく目立った。5月も終わりに近づき、森が湿ってくると、こんどは菌類が目に入るようになった。キノコが咲き出したからだ。梅雨に入ると、秋に先駆けてキノコの祭りが始まる。

車に戻ってから、林道を上って山を下りた。ほかの遊歩道にも車が止まっていた。お目当てはウオーキング、あるいは鳥、花? 併せて森林浴を楽しむ人たちが常に一定数はいる、ということなのだろう。私もその一人だが。遊歩道では結局、だれともすれ違わなかった。

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