車で石森山(平)まで行って、遊歩道を散歩する。4月に始めた「新しい習慣」だ。フラワーセンターに隣接して、林道から沢の底へと遊歩道が張り巡らされている。
すり鉢を真ん中から半分にしたような地形だ。底をせせらぎが流れる。せせらぎに沿って行ったり来たりすることが多い。
4月より5月、5月より6月と、森の底に湿気がこもってきた。20代後半からおよそ20年間、石森山を丸かじりするように歩き回ったときの記憶がよみがえる。
日曜日の早朝、子どもを起こして野鳥観察に出かけた。平日も昼休みを利用して、野草や菌類を観察した。この時期は、夏鳥のキビタキ、サンコウチョウがさえずり、アラゲキクラゲが立ち枯れの木に発生する。「現場」を通るたびに当時の映像が網膜に映し出される。
散歩といっても、堤防をウオーキングするのと違って、ゆっくり進んでは立ち止まり、立ち止まってはまたゆっくり進む、その繰り返しだ。地面を見る。周りを見渡す。緑で覆われたこずえを仰ぐ。ウオーキング6割、ウオッチング・ヒアリング4割といったところか。
月曜日(6月7日)は、ついにアラゲキクラゲと出合った=写真上1。出ていてもおかしくない。そう思って、森に入るたびに立ち枯れと倒木に目を凝らしてきた。ある遊歩道では立ち枯れの幹にびっしり、別の遊歩道では倒木にわんさと生えていた。
記録を兼ねて写真を撮る。野生キノコは今のところ食べられない。「あきらめ」が習い性になって、それ以上なにかをしようという気は起きない。
ところが――。夕方、晩酌を始めると、もう一人の自分がささやく。なぜアラゲキクラゲの放射線量を測ろうとは思わなかったのか。
そうだった。近くの公民館で自家消費用作物などの放射能簡易検査ができる。3年前、義伯父の家の甘柿を測ったことがある。結果は「検出下限値未満(キロ当たり20ベクレル未満)だった。
市のホームページで確認する。今年(2021年)4月1日から検査所の開設体制が変更になった。近所の公民館にある検査所は月・水・金で、昼休みをはさんで午前9時から午後4時半まで受け付ける。非破壊検査で、必要な量は500グラムだという。測定時間が少ない・一定に切り刻まない、といった批判はあるが、測定することでひとつの目安にはなる。アラゲキクラゲの「今」により近づくことができる。
火曜日(6月8日)朝、散歩を兼ねてアラゲキクラゲの一部を採取した。重さは約800グラム。これを検査要領に従って水で洗い、木くずやごみを取り除き、ざるに広げて一晩おいた=写真上2。
この日、林道に入るとフィールドスコープを持った男性がいた。狙いはおそらく長い尾をひらひらさせて飛ぶサンコウチョウの雄。南から渡って来て間もないらしく、今年初めて、遊歩道で「(ツキヒホシ)ホイホイホイ」を聞いた。
水曜日(6月9日)朝、アラゲキクラゲを二重のビニール袋に入れて検査所へ持って行く。結果は甘柿同様、「検出下限値未満」だった。老人が食べる量は限られる。「お福分け」もキノコだから簡単にはいかない。親しい人にだけ検査結果を見せる。余ったら天日に干して乾燥・保存しよう。
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