2021年6月25日金曜日

庭に来るウグイス

        
 これは、ウグイスにとっては尋常な行動なのだろうか。今までにも庭に現れて、「ホーホケキョ」とやることはあった。でも、今年(2021年)は火曜日(6月22日)、庭の方で遠慮がちに歌い出したと思ったら、翌日は朝、昼、夕と、高らかに「ホーホケキョ」とやっていた。「ケキョケキョケキョ」の谷渡りも聞いた。まるでこのへん(住宅街)を縄張りにしたような鳴き方だ。

わが家に隣接する東と南、計4軒の家は庭に木が植わってある。4軒まとめるとちょっとしたグリーンスポットになる。ウグイスはもともと山野の鳥。このグリーンスポットは、大陸(山野)から離れた海上の孤島のようなものだ。そこへほかの島(大きな家の庭)を伝ってウグイスが漂着した?

わが家の南隣に義弟が住む。最初は義弟の家の庭の方からか細い声が聞こえてきた。そのうち、わが家の庭=写真=に現れて高らかに歌い出した。2日目はこの2軒の庭を何度か周回しながら歌っていた。

 歌い方に癖がある。正確には、「ホーホケキョ」ではなく「ホーホケベキョ」だ。夏井川渓谷の隠居でも、行くたびにウグイスの声を聞く。耳に飛び込んでくるのは「ホーホケキョ」、たまに「ホーホケベキョ」。同じ個体が鳴き方を変えるのか、別々の個体が違う鳴き方を習得したのか。そのへんのことはむろんわからない。

 若いときに川村多実二『鳥の歌の科学』(中央公論社、1974年)を読んで、鳥にも方言があることを知った。「ホーホケベキョ」はその典型だろう。

 と、ここまで書いてきて思い出した。近所のどこかにハシブトガラスが巣をかけたらしい。毎朝、わが家の庭にある電柱や、隣の駐車場に設けられたケータイのアンテナに止まって、「カッカッカッカッ」とやる。すぐ近くにごみ集積所がある。それが狙いのひとつかもしれない。

 朝だけでなく、日中もやって来る。すっかり鳴き声を覚えた。鳴き声から何をしようとしているのかわかれば、こちらも対応のしようがあるのだが、そこまでは知識も経験もない。

カラス研究の第一人者、杉田昭栄・宇都宮大学名誉教授が3年前に『カラス学のすすめ』(緑書房)を出した。図書館から借りて読んだ。

「今でもカラスは黄色が嫌いだと思っている方もいるようですが、(略)カラスに嫌な色はありません。あくまでも紫外線遮断効果がないと効果はないことを、この場でお伝えしておきます」。ごみネットを買うときには黄色を選んでいたが、今は青色でも黄色でもかまわない、あるものを買うようにしている。

 その杉田さんが最近、同じ出版社から『もっとディープに!カラス学』を出した。図書館にある。「貸出中」だ。街場ではごみをめぐる人間とカラスの闘いが続く。負けるわけにはいかない。そのためにも、早く新しい知識に触れたいのだが……。

 そうそう、ウグイスが遠慮がちに歌い出した日の夕方、庭の柿の木の方から「ジージージージー」というかすかな声が届いた。ニイニイゼミの初鳴きだった。

ニイニイゼミの鳴き声にはいつも迷う。というのは、一年中、右耳にニイニイゼミを飼っているからだ。外から聞こえるニイニイゼミなのか、耳鳴りなのか、判断がつかないときがある。ニイニイゼミの声はそのくらいか細く静かだ。

ウグイス、カラス、ニイニイゼミ……。わが家の小さな庭でもいのちの歌が響く時節になった。

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