2021年6月23日水曜日

「初物」のお福分け

        
 毎朝、台所の軒下にあるキュウリ苗をチェックする。5月下旬に定植してからほぼ1カ月。根元から7節まで芽かきをした。そのあとに伸びたつるの節に花が咲き、実が肥大しはじめた。

 月曜日(6月21日)に見ると、1本が大人の小指くらいの長さになっていた。ここまで育つと、キュウリは一気に大きくなる。火曜日は万年筆大になっていた。水曜日、つまりけさ、「初物」として収穫し、床の間に飾った。

 私より早くキュウリ苗を定植したところでは、もう初物を食べたことだろう。というのも、6月中旬には野菜のお福分けが始まったからだ。

 最初は後輩から。アーティチョーク、ズッキーニ、タマネギが届いた。すると次は近所から大根が、同じく近所の別の家からナスとキュウリが届いた。

 近所にはお年寄りが多い。戸建て住宅なので、家によっては庭の一部を菜園にしている。わが家の軒下のキュウリ苗は、太陽の光がさすものの、十分ではない。露地栽培なら限られたスペースであっても、光をたっぷり浴びてのびのびと育つ。実がなるのも早い。

 果樹も、梅雨期に実りを迎えるものがある。プラム、これはわが家の庭にもある。幹が途中から二股になっていたが、1本は菌類(キノコ)に侵されたので、後輩に頼んで切ってもらった。残った半分に実がなっている。実自身の重みで枝が折れる。カミサンが実を摘んで片付けた。それが今年(2021年)の初物。

 日曜日の朝、知り合いの家へ行ったら、夫婦で庭のビワの実を採っていた。カミサン同士がおしゃべりをしている間、収穫の手伝いをした。帰りに、ビワの入ったレジ袋を渡された=写真。これももちろん初物だ。

 次の日、カミサンが街へ行くと、リュックサックを背負った知り合いにばったり会った。リュックサックの中身は、ダンナさんが栽培しているトウモロコシだった。その場で何本かをちょうだいしたという。このほかにも、川向こうの知人からキュウリとインゲンが届いた。

 そういう時期になったのだと、気持ちを切り替える。キュウリは、家庭菜園では人気の野菜の一つ。実がなり出すと、あちこちからお福分けが届く。

キュウリは大根と違って、水分が飛ぶと中身が白っぽくなる。漬けてもまずい。だから、糠床とは別に、ホーローのキッチンポットに塩を振り、重しをのせて古漬けにする。今までの例だと、これから2カ月、8月下旬まではお福分けが続く。その準備をしないと――

野菜がそろうと調理法を工夫しないといけない。今は、とにかく糠漬けを量産する。それ以外の食べ方はカミサンに頼む。同じインゲンがおひたしになり、てんぷらになる。タマネギの甘酢漬けは毎晩欠かさない。というわけで、最近は夜、品数が二つ、三つ増えた。

トウモロコシは「ゆでるより蒸した方がいい」といわれたとかで、それを食べた。やわらかくて甘い。

前にも書いたことだが。地域全体が貧しかったときには、お福分けが当たり前だった。お福分けは助け合う暮らし、支え合う暮らしの入り口でもある。コロナ禍の今、これこそが古くて新しい生活様式ではないだろうか、などと、わが家のキュウリの初物を手にして、また思った。

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