6年ぶりに川前町の「いこいの里鬼ケ城」を訪ねたことを、先日書いた。狙いは夏鳥のカッコウ。夜明けの大コーラスが終わったあとで、カッコウも沈黙していた。が、夜明けに鬼ケ城にいればカッコウの鳴き声が聞こえる――それがわかったことは収穫だった。
そしてもう一つ、鬼ケ城へ行ったからこその“発見”。自生か植栽かはわからない。が、レストハウス周辺にシラカバ=写真上1=が何本かあった。カシワの大木もあった。これまで何度か鬼ケ城を訪れているが、シラカバの記憶は全くなかった。
このごろはたまに、キノコの胞子から世界を見たらどうなるか――そんなことを考える。
自然と自然の交通、自然と人間の交通、人間と人間の交通。この三つの交通(関係)で世界は成り立っている(内山節『自然と人間の哲学』岩波書店)。ならば、みんなが主役ではないか。なかでも会ってみたい主役のひとつがベニテングタケだ。
この毒キノコはシラカバと共生する。阿武隈高地には、シラカバは自生しない、だからベニテングタケも見られない、というのが定説だ。が、植栽されたシラカバの根に胞子が活着することはあり得るだろう。現に、阿武隈高地でベニテングタケと出合った知人がいる。
だから、三和町の芝山(819メートル)にあるシラカバ林や、小川町の旧戸渡分校近くの道路沿いにあるシラカバが頭から離れない。秋になったら木の周りを確かめに行くか――近年はそんな思いがめぐるのだが、なかなか実行できないでいる。
5年前(2016年)の8月、同級生4人でサハリン(樺太)を訪れた。オホーツク海側の道路を北上したら、道の両側がシラカバ林だった。ベニテングタケの菌輪(フェアリーリング)を想像して興奮した。
北海道は、釧路国阿寒郡舌辛村二十五度線(現釧路市阿寒町紀ノ丘地内)の「猪狩満直開墾地跡」。草野心平記念文学館で動画を見たのだが、そこにシラカバが1本、左手にはカシワの木が何本かあった。この動画からもベニテングタケの幻想が立ち昇った。
カシワは、宮沢賢治の童話「かしわばやしの夜」では主役を演じている。北海道の帯広へ行ったときには、それこそ防風林のようなカシワ林を見た。
いわきは東北の最南端だが、鬼ヶ城山(887メートル)の中腹にあるいこいの里鬼ゲ城は標高が630メートル前後と、ちょっぴり北国の雰囲気を味わえる。サハリンや北海道はともかく、岩手の小岩井農場あたりが恋しくなったら鬼ケ城へ来るか――シラカバとカシワの木から次々に旅の思い出がわいてくるのだった。
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