2021年8月10日火曜日

「エレン」は無事だった

        
 おととい(8月8日)は朝から降ったりやんだりの一日になった。日曜日なので、いつもだと午後遅くまで夏井川渓谷の隠居で過ごすのだが、雨では何もすることがない。

 隠居に着いてすぐキュウリを収穫し=写真(一番長いのは35センチもあった)、少し休んで知人の家に寄ったあと、昼前には家に戻った。

 平地の小川町・三島地内で道路と夏井川が並走する。そこはハクチョウの越冬地。今年(2021年)は、1羽がけがをして残留した。3月下旬、それに気づいて以来、毎週、隠居への行き帰りに観察している。

前にも書いたが、6月中旬の日曜日、いつもより1時間以上早く家を出て、8時ごろ三島に着いた。おばさんがいて、ガードレール越しに眼下の残留コハクチョウを見ている。えさをやり終えたばかりだという。

名前も付けていた。「エレン」。ロシア生まれだから、片仮名にしたのだろう。あとで調べたら、エレンはギリシャ語の女性名ヘレンの英語形だった。ヘレネ、ヘレナもエレンの変形だという。以後、白鳥おばさんに敬意を表してエレンと呼ぶことにした。

そのエレンの姿が7月下旬から見えない(日曜日だけの観察だが)。同じように、通勤時にエレンの姿を見ていた若い知人も、「どこかへ飛んで行ったんですかね」と心配する。

考えられるケースは三つ。このことも前に書いた。けがをして残留したコハクチョウが自然治癒をして飛べるようになるのは、可能性としてはゼロではない。しかし、過去の残留コハクチョウの例からして、それは難しいのではないか。だとしたら、野犬やキツネなどに襲われたか、あるいはあまりの暑さに、日中はどこかへひそんでいる? 

おととい朝、三島地内で車を止め、上流の方をうかがうと、中州に白い鳥が2羽いた。1羽は間もなく飛び立ったのでサギとわかった。もう1羽は? カミサンが双眼鏡でのぞくと、エレンだった。

しばらく姿を見せなかったのは、やはり連日の酷暑が原因だったか。ハクチョウは夏でもダウンジャケットを着ている。夏、北極圏へ戻って繁殖し、秋、日本へ渡って来る分にはいいが、熱帯並みの日本の夏は、ハクチョウには羽毛を脱ぎ捨てたいくらい耐えがたいはずだ。

おそらく近くの河畔林にでも入って直射日光を避けていたのだろう(もちろん、実際はどうなのか、エレンに聞いてみないとわからないが)。

動物たちには生存する(暮らす)ための「適地」がある。エレンにとって夏の適地はロシアの北極圏。そこへの移動はかなわなくなったが、たまたまこの日、空が鉛色の雲で覆われ、降ったりやんだりの天気になったために、中州へと現れたのではなかったか。

残暑はまだまだ続く。しかし、あと2カ月もすれば仲間が戻って来る。今はこの夏をなんとかしのいでくれ――そう胸の中でエールを送るしかない。

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