2021年8月1日日曜日

カラスの鳴き声

                      
   隣家のテレビアンテナや、隣の駐車場に設けられたケータイのアンテナに止まって、「カッカッカッカッ」「カアア、カアア」とやるカラスがいる。鳴き声だけで姿を見ていないから、1羽なのか2羽なのかはわからない。

家の前にごみ集積所がある。ときどき、カラスにごみ袋をつつかれて、生ごみが散乱する。鳴き声を聞いて意味がわかればすぐ飛び出すこともできるのだが――いつもそんな思いが頭の隅っこにある。

カラス研究の第一人者、宇都宮大学名誉教授の杉田昭栄さんが新著『もっとディープに!カラス学』(緑書房)を出したので、旧著『カラス学のすすめ』(同)と一緒に、図書館から借りて読んだ=写真。

新著にはより詳しいカラス研究の成果が盛り込まれているが、ごみ袋をめぐるカラスとの闘いという点では、旧著の方が具体的で参考になる。

カラスは赤、青、緑、紫外線の四原色色覚を持っている。そこで、紫外線を透過させないごみ袋、つまり人間には中身が見えてもカラスには見えないごみ袋を企業と共同で開発した。ごみ袋の素材であるビニールにある原料を充填した結果、ごみ袋が黄色になった。

実用化されて効果をあげたために、「黄色であれば何でもカラスが寄ってこない」と勘違いされたらしい。青色のほかに黄色いごみネットも売られるようになった。わが行政区では、集積所用にごみネットを支給している。一時は黄色に絞っていたが、杉田さんの本を読んでからは、青でも黄でも、あるものを買ってくる。

生ごみが見えないように新聞でくるむ。ごみネットはちゃんと袋の下に入れる。でないと、1羽がくちばしでネットを持ち上げ、1羽がごみ袋を引っ張り出す、といったチームプレーまでやってのける。結局は、ごみを出す人間の側に問題があって、カラスを引き寄せているのだ、ということになる。

旧著で再確認したこと――。カラスの脳はほかの動物に比べて大きい。空間識別能力も優れている。どこに「貯食」したかを1年は覚えている(最長1年の実験結果だから1年で、実際はそれ以上かもしれない)

肝心の鳴き声だが、ハシブトガラスは①気持ちよく鳴くときには澄んだ声で「カァ~カァ~」を繰り返す②怒ったときは「ギィャーギィャー」とか「グワッグワッ」と騒ぐ③求愛のときは「クワ~ンクワ~ン」と少し語尾が低くなるような甘ったるい鳴き方をする――そうだ。このへんから、庭にやって来るハシブトの「心理」を探るとしよう。

新著からもひとつ。カラスは「自然界の道路安全管理者」だという。路上に死んで横たわっている犬や猫、タヌキのところへ真っ先にやって来るのはカラスだ。交通量の多い場所では、車が赤信号で止まるのを待って死骸を道端に寄せようとする。つまり、車の通行障害物を取り除いてくれる。カラス自身の安全のためでもある。

夏井川渓谷の隠居への行き帰り、たまに動物の死骸を見る。カラスが群れている。実際、道端に寄せようとしているところも、この目で見た。

 こんな大胆ないたずらもする。渓谷の小集落。カラスは人間の行動を電柱や鉄塔からじっくり見ている。家人が戸を開けたまま留守にしたら、カラスが家に入り込み、好き勝手に振る舞った。お茶菓子がなくなっていたこともあったという。

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