JR磐越東線と並走するかたちで夏井川渓谷を縫う県道小野四倉線は、いまだに大型車両が通行できない。
令和元(2019)年10月12日、台風19号の影響でいわき市は同川流域を中心に甚大な被害が出た。下流域では床上・下浸水が5000棟近くに及び、12人が亡くなった(直接死8人、関連死4人)。ほかに1人が犠牲になっている。上流域でも河川の護岸崩落・洗掘や路肩とのり面の崩落などが相次いだ。
夏井川渓谷の小集落に隠居がある。日曜日は朝から午後まで、土いじりをして過ごす。拙ブログによると、台風19号が襲来した直後はこんな様子だった。
――渓谷はところどころ山から土砂が流れ出して路面が茶色くなっていた。ロックシェッドから500メートルほど行った山側の沢では小規模な土石流が発生したらしい。江田の集落では山側から土砂が流れ出し、道路が小石まじりの砂利道と化している。
籠場の滝の手前およそ500メートル、磐越東線直下のS字カーブで土砂崩れが起き、木々がなぎ倒されて土石が山となっていた。地元の住民が応急的に倒木を切り、普通車1台を通れるようにした。
滝の上流では駐車場の護岸がえぐられていた。隠居の手前に錦展望台がある。その山側、道路をくぐって夏井川に排水する水路が倒木と土石で埋まり、行き場を失った水が大小さまざまな石で覆われた路面を流れていた――。
当初、渓谷の入り口、高崎(小川町)地内の県道片側に通行止めの柵が設けられた。それが間もなく、道端の看板「9km先 いわや旅館以降は大型車両通行不可」に替わった。
渓谷の住民はもちろん、私のような半住民も渓谷の家へ行くには、「オウンリスク(自己責任)」で通るしかない。東日本大震災のときもそうだった。
看板のほかに、渓谷には何カ所か土砂の詰まったフレコンバッグで“関所”が設けられた。関所は普通車1台が通過するだけのすきましかない。
あとで上流の川前まで行ったとき、大型車両が通れない「現場」がわかった。小川と川前の境をなすJR磐越東線大滝踏切の先、次の山前踏切に差しかかる手前に「幅員減少」の看板とカラーコーンがあった。
山側は切り立った崖で沢になっている。谷側はじかに夏井川と接している。もともと狭隘な道だ。そこに山から土砂が流れ落ち、谷の濁流が護岸をえぐったのだろう。
台風襲来から間もなく2年。ここでもようやく護岸工事が始まった。山前踏切を越えた先でも護岸工事が行われている。谷側に工事用の取り付け道路を設けての作業だ。道幅が狭いV字谷だけに、難工事になるのはまちがいない。
宇根尻(川前)から差塩(三和)へ駆け上る県道川前停車場上三坂線の宇根尻橋直下でも、護岸工事が始まった=写真。
いわきのヤマにも台風19号の爪痕が至る所に残っている。下流部の大規模復旧工事があらかた終わったことから、周辺へと復旧工事の重点が移ってきたのだろう。
江田から横川(小川)へ抜ける母成林道も通行止めになった。ここは渓谷が通行止めになったときの「う回路」だが、その役目が果たせないでいる。渓谷が陸の孤島化しないためにも早い復旧が待たれる。
0 件のコメント:
コメントを投稿