横向きの白いユリの花があちこちで咲いている。タカサゴユリという人もいるが、タカサゴユリとテッポウユリの交雑種、シンテッポウユリだろう。
タカサゴユリは台湾が原産で夏に咲く。テッポウユリは南西諸島に自生し、春~初夏に咲く。同じ白い花でも花期が違う。
いわき地方でこの花が目につくようになったのは、私が40代のころだった。つまり、ざっと30年前。実際はその前からあったかもしれない。8月も後半に入ると、新しいバイパスや高速道路ののり面がこの白い花で埋め尽くされた。なんとも表現しようのない壮観さだった。
「新風景」の出現をどう見たらいいのか。植物に詳しい知人に問い合わせると、タカサゴユリという認識だった。
タカサゴユリの花には赤褐色の筋がある。ところが、赤い筋のないものもある。タカサゴユリとテッポウユリのハイブリッド(交雑種)、シンテッポウユリという人もいた。要するに、タカサゴユリとシンテッポウユリの両方が生えているのだと考えればいい、ということだった。
しかし、どうもしっくりこない。「園芸種」のタカサゴユリが持ち込まれたのは1924年、同じ園芸種のシンテッポウユリが野生化したのは1970年代。園芸種のタカサゴユリが野生化できる性質を持っていたとしたら、もっと早く広まっていたのではないか、という研究者の疑問が腑に落ちた。私は、今ではシンテッポウユリ一本で考えている。
以来、この花には引かれながらも距離をおくようになった。増えすぎたらどうなるのか、在来種に影響はないのか――そんな思いがずっと付いて回る。
その花がじわじわと暮らしの場にも侵入しつつある。わが家では5年前(2016年)に初めて、生け垣のたもとにシンテッポウユリが芽生え、花を咲かせた。翌年も同じところから芽を出した。ほかの場所からも生えてきた。
そのままにしておくと、庭が白い花だらけになる。そうならないよう、今では初夏、若い茎が庭に現れると根ごと引っこ抜く。
奄美地方では希少種のウケユリを守るために、シンテッポウユリを「外来種駆除対象種」にしている。環境省の「生態系被害防止外来種リスト」でも、「その他の総合対策外来種」に指定されている。つまり、シンテッポウユリは侵略植物、そういうふうに意識が変わってもいい時期にきているのではないか。
夏井川渓谷はさいわい、まだ侵略されていない。そう思っていたのだが、おととい(8月28日)の土曜日、キュウリを摘みに隠居へ行ったとき、江田地内の道路ののり面にこの花が咲いていた=写真。「ヤマユリ街道」にもとうとう現れたか。
隠居の庭や近辺で咲いていたら、とりあえず切り花にする。花が散ったところですぐごみ袋に入れる。なにより種子ができないようにすることが一番、と私は思っている。
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