2021年8月13日金曜日

セミのいのち

                      
 ある夜、開け放している茶の間にミンミンゼミが飛び込んできた。アブラゼミも1匹、電灯のまわりでバタバタやっている。

 ミンミンゼミはすぐ、上がりかまちの柱につるしたデニムの袋に止まった。一夜明けてもそのままの姿でいる=写真上1。そっと触れたが、ピクリともしない。すでに息絶えていた。

 このごろセミの死骸をよく見かける。玄関で、家の前の歩道で、足をたたむようにしてひっくり返っている。アブラゼミが多い。

 甲虫のタマムシ=写真上2=も近くの道端で死んでいた。去年(2020年)の夏だったか、「タマムシハンター」の話を聞いたことがある。成虫はエノキの葉を食べる。その木をマークしていて、生け捕りにするのだそうだ。緑色の金属光沢が美しい。背中に赤と緑の縦縞が入っている。確かに、「昆虫標本」というよりは「色見本」としての魅力が優る。

セミの死骸も、タマムシの死骸もそのままにしておくのはしのびない。しばらくは飾り皿などに“安置”して、ときどき眺める。

 わが家の庭では6月下旬から8月下旬にかけてセミが鳴き続ける。カキの木が枝葉を広げ、それに付き添うようにカエデその他の木が植わってある。カキの根元にミョウガが葉を伸ばしている。その葉裏などにセミの抜け殻が付いている。地面も至る所に穴=写真上3=が開いている。直径は1.5センチほど。地中で長い間暮らしていたセミの幼虫が地上にはい出た跡だ。

蝉しぐれのピークは7月下旬。早いときには、未明の4時過ぎに鳴き出す。最初はミンミンミーとつつましい。やがて日が高くなるとつんざくように、ミンミンミンミンミー、ミンミンミンミンミー……。合間に、オーシツクツク、オーシツクツクのツクツクボウシ、ジリジリジリジリジリのアブラゼミ。朝と晩、たまに遠く近くカナカナカナのヒグラシが鳴く。

闇に包まれたあとも、思い出したようにジリジリジリジリと鳴いたり、茶の間に迷い込んだり……。

 セミの寿命は、俗説では1~2週間だが、最近は研究が進んで1カ月前後は生きているらしい。とすると、今、目にする死骸は7月前半に羽化したものだろう。

いわきでは今、コロナ感染者が爆発的に増えている。去年以上にステイホームを心がけないといけない。巣ごもりの息抜きは朝晩、庭を雑木林にみたてて、あれこれウオッチングすることだ。今年はそれでセミの幼虫の穴がわかった。抜け殻も何個か集めた。

きのう(8月12日)は朝、雨上がりの空気がひんやりとしていた。初めて「秋」を感じた。そのなかで友人の奥方の告別式が行われた。家に帰ると、庭のセミが時折、静かに鳴いた。きょうも雨。涼しい月遅れ盆の入りだ。

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