ともかくも月遅れ盆が終わった。区内会の役員として「精霊送り」の受け付けをする側に回って10年余。お盆は「休む」ものではなくて「務める」ものになった。
わが区は戸建てと集合(中層の県営や民間アパート)が混在する住宅地区だ。精霊送りの場所はおおよそ区の中心に位置する県営住宅集会所の前庭で、多くは徒歩、ほかは車や自転車でお盆の供え物を持って来る。
路上駐車があると、車に祭壇が遮られて供え物を納められない。このため、14日午後には路肩に「駐車自粛お願い」の立て看板を出す。16日当日の朝、祭壇の前に車が止まっていることは、さいわいにもこれまでなかった。今年(2021年)も14日から車が消えていた。
集会所前が精霊送りの場所になることは、いちおう知られているようだが、万一を考えて、毎年、看板を立てる。手は抜けない。
15日は夕方5時から集会所前庭の草を引き、清掃をして、祭壇の四方に青竹を立てる。今年は庭全体がクズの葉で覆われていた。細いヘビのようなクズの先端は集会所の玄関をうかがい、床下の通気口に侵入していた。
今年はクズがすごい、なぜここまで?と考えて、はたと思い至った。今年もコロナの感染拡大を受けて、春のいわきのまちをきれいにする市民総ぐるみ運動(6月4~6日)が中止された。集会所の周りや、隣接する児童公園の生け垣も一部、クズなどに覆われている。手つかずのままだったのだろう。6人の役員でクズを刈り払ってから、草を引っこ抜いた。
前線が停滞し、西日本では大雨が続く。いわき地方も南部を中心に雨が降り続いた。15日も雨だったが、午後にはやんだ。精霊送りの準備が滞りなくできたことにホッとする。
16日は、朝6時から収集車がやって来る9時まで、役員が交代で受け付けを担当する。私ともう一人は6時台の担当で、6時前には供え物を安置する台(座卓)を置き、ブルーシートで覆い、さらには焼香台や線香、ろうそくなどをセットしないといけない。
5時半に行ったら、もう供え物が置いてあった=写真。毎年、1人か2人は夜明けとともに持って来る。
風が少し吹いていた。ろうそくの火がすぐ消える。たびたび手をかざして風を遮り、火を保っているうちにおばあさんがやって来た。風を遮って線香に火がつくのを手伝う。
おばあさんは焼香し、「また来年、待ってるよ」とつぶやきながら、供え物と一緒に帰るご先祖様に向かって合掌した。これが精霊送りなんだ、精霊を送る場を設ける意味があるんだと、厳粛な気持ちになる。
15日夕方に続いて、16日朝も曇りだった。それはしかし偶然というものだろう。「雨のときにはどうしたら」と、役員の一人がいう。
コロナだけではない。異常気象がある。台風や土砂降りの8月15、16日も想定しないといけない。ほかの行政区ではどうしているのだろう。事例を調べる必要がありそうだ。
さて、と精霊送りを終えて思うのだが、今年は新盆家庭を回って供養する「じゃんがら念仏踊り」の鉦(かね)の音を聞かなかった。新盆家庭だけでなく、一般の市民にとっても寂しいお盆になった。コロナはこんなところにも影響を及ぼしている。
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