6月末に後輩がアーティチョークの花を持って来た。花瓶に飾ったら、ゴッホの「ひまわり」の絵を思い出した。ネットで検索して、どちらもキク科の植物であることがわかった。いわき昔野菜の「おかごぼう」もキク科の植物で、アザミに似た花を咲かせる。アーティチョークは和名がチョウセンアザミ。花がアザミに似ているのは当たり前――そんなことを、前に書いた。
そのあと、いわき総合図書館の新着図書コーナーに、スティーヴン・A・ハリス/伊藤はるみ訳の『ひまわりの文化誌』(原書房)=写真=があったので、借りた。
臨時休館に入った8月7日が返却日だった。とりあえず図書館が再開するまで手元に置いて再読、三読することにした。
タイトルからしてヒマワリが中心の文化誌だが、アーティチョークも登場する。見た目で結びつけていた植物が系統的につながっていた。おもしろい。勉強になる。
ブログ(7月7日付)では「キク科の花たち」というタイトルにした。『ひまわりの文化誌』は、キク科「ヒマワリ属」の花たちを「生物学、生態学および文化的な側面から探求」している。
ヒマワリ属の基本的な構造、ヒマワリの仲間、進化の過程、人間との関係(薬用・食用)などを明かす。といっても、ヒマワリとその仲間(キク科植物)の話だから、ヒマワリ属にはとどまらない。現に、アーティチョークはチョウセンアザミ属、ゴボウはゴボウ属、アザミはアザミ属だ。
ウィキペディアによると、ヒマワリの原産地は北アメリカ西部と考えられている。先住民族の食用作物として重要な位置を占めていた。16世紀初め、スペイン人がヒマワリの種子を持ち帰り、マドリード植物園で栽培した。それから100年近くたってフランスに、次いでロシアに伝わる。ロシアは食用ヒマワリの主要生産国になった。国花までヒマワリだ。
若いころ、「ネアンデルタール人も死者に花を手向けた」という記事を、自然科学系の雑誌か何かで読んだ記憶がある。旧人類にも死を悲しむ感情があったのかと、心を揺さぶられた。そのこととつながる記述がある。
「その骨の近くから(略)キク科の花の花粉が見つかった。考古学者は付近の状況からみて、その花粉を残した花はネアンデルタール人の埋葬儀式に使われたものか、もしくは医薬品として使われたものではないかと推測した」
しかし、異説もある。リスやネズミが花を保存食としてそこに蓄えたのではないか――。供花であれ、薬用であれ、小動物の食用であれ、広く深く想像することには意味がある。
おもしろいことに、ゴッホの「ひまわり」の絵については、「芸術としてはすばらしいが、科学的な植物画としての価値はない」のだとか。つまり、植物細密画(ボタニカルアート)ではないのだと。確かにそうかもしれない。が、美術を科学の目で見てもしようがない。美術は美術として楽しめ、ということでいいのではないか。
コロナが巣ごもりを強いる今、本を読む気になればいくらでも読める。『ひまわりの文化誌』を読み返すたびに、なにか新しい発見があるかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿