「100年フード宣言」。文化庁が新たに打ち出した食文化のPR制度だという。先日、いわき民報が詳しく報じていた=写真。
同庁は一昨年4月、食文化専門の部署を設置した。その部署が行った事業の一つが「100年フード宣言」だとか。
同庁によると、わが国では豊かな風土や歴史に根差した食文化が存在しており、特に歴史性のあるものは文化財として登録する取り組みが行われている。
一方で、比較的新しいことを理由に文化財として登録されていない食文化であっても、世代を超えて受け継がれ、長く地方で愛されてきたものが多く存在する。
そうした食文化を「100年フード」と名付け、地域の関係者や自治体が100年続く食文化として継承することを宣言する取り組みを推進することにしたという。
部門は①伝統(江戸時代から続く郷土料理)②近代(明治・大正に生み出された食文化)③未来(目指せ100年!)――の三つで、いわきからは市が申請した「メヒカリの唐揚げ」のほか、「サンマのみりん干し」と「サンマのポーポー焼き」「あんこうのどぶ汁」の3品が③に認定された。
サンマは小名浜水産加工業協同組合・小名浜さんま郷土料理再生プロジェクトが、どぶ汁はいわき観光まちづくりビューロ―が申請した。
平成7(1995)年3月、『いわき市伝統郷土食調査報告書』が刊行された。市観光物産課(当時)がいわき地域学會に調査・編集を委託した。報告書のなかから100年フードに認定された料理や魚種についての記述をピックアップする。
【メヒカリ】戦前はハマの人だけが食べる大衆魚だったが、今や高級品に格上げされた。
【サンマ】伝統料理のようで新しいのがサンマ料理。戦後、棒受け網漁によってサンマが大量に獲れるようになった。不漁続きのイワシに代わってサンマみりん干しを安川市郎が開発し、加工業者を救った。ぽうぽう焼きは、もともとは船上料理だった。
【アンコウ】ハマの料理に鍋料理の「直煮(じきに)」がある。これに水を多くしたものを「どぶ汁」という。体を心から暖めてくれるので、冬には欠かせない。
同書によれば、いわきの食文化の特色は浜の料理が多彩で豪華なことだが、それも目の前に広がる海が豊かであればこそ、だ。
伝統食はその土地の第一次産業、産物と結びついたものだから、その産業がすたれ、産物が手に入らなくなると、食の技も食習慣も消滅する。伝統食だから盤石、などということはない。
伝統食は創意工夫のなかで絶えず生みだされるものでもある。盛衰を繰り返しながら、過去から未来へと伝統食は姿を変えて受け継がれていく。「100年フード宣言」とはつまり、絶えざる創意工夫と継承の覚悟を示したものと受け取ることもできる。
それと、もう一つ。哲学者の内山節さんが行政の計画について書いている。「5年から100年に時間軸を延長すれば、“何をつくるか”から、“何を残すか”という計画にかわる」。「100年フード宣言」に触れて、まず思い浮かんだのがこの言葉だった。
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