2022年3月28日月曜日

ウグイスの初音

        
  3月最後の日曜日は、晴れて強風が吹き荒れた。夏井川渓谷の隠居へ出かけ、畑に生ごみを埋めると、家に引っ込んで風を避けた。

風はしかし、もう冬の冷たさではない。室温は石油ストーブ一つで17度まで上がった。ラジオが伝える各地の気温も高い。

体が温まるとまた外へ出て地面に目を凝らし、家の周りを歩いて春を探した。下の庭は枯れ草の海に緑の島ができていた。

地温もだいぶ上がってきた。畑の土がほぐれてきたのでわかる。3月22日の雪(みぞれ)のあと、土曜日にお湿りがあったためか、畑にスコップを差し込むと、すんなり入っていく。

 緑の島の一つはオオイヌノフグリ。島と島がつながって大陸になり、その上に空色の花のレースが重なる。かたわらでは、前の日曜日まで気づかなかったツクシが茎をのばしている=写真上1。

 庭の木に目をやれば、玄関わきのアセビは白い鈴を鳴らしたように花盛りだ。風呂場の前のカリンも芽吹き始めた。

渓谷に入る手前、加路川が夏井川に合流するあたりでは、ハクモクレンが咲いていた=写真上2。

 鳥の声はない。あまりの風の強さに、人間同様じっとしているのか。渓谷でもそろそろウグイスがさえずり始めるのでは、と期待して来たのだが、結局、この日は風の音しか聞こえなかった。

朝も帰りも、小川町三島の夏井川ではハクチョウが50羽ほど羽を休めていた。北帰行が続いて、そこまで数を減らした。 

ちょうど1年前の3月27日、土曜日早朝。「朝めし前の生ごみ埋め」に、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。

三島のハクチョウは姿を消した、と思ったら、1羽だけ残っていた。右の翼が少しおかしい。1週間後もいれば、けがをして飛べなくなったコハクチョウであることがはっきりする。

4月4日の日曜日朝、隠居へ行く途中に見ると、やはりいた。間違いない、けがをして残留したのだった。

このハクチョウに「エレン」と名付けてえさをやっている女性がいる。その後の経緯については、拙ブログで何度か取り上げた。

暑い夏に耐え、秋になって仲間が飛来すると、どこにエレンがいるのか、わからなくなった。しかし、世話をしている女性にはわかる。エレンは飛べるようになったともいう。

一番いいのは、エレンも含めて1羽もいなくなることだ。それがわかるのは今度の日曜日あたりか。

ところが、なかに1羽、羽のそばだっている個体がいた。たまたま風にあおられてそうなったのか、それとも……。エレンの例があるので、気がもめる。

隠居から街へ戻ったあとは、夏井川の堤防を利用して帰宅した。ハクチョウは1羽もいなかった。

新川の合流部からやや下流、平・塩地内の河川敷が一部、やぶのままになっている。そこからこの春初めて、ウグイスの下手なさえずりが聞こえてきた。まずは春を告げる声にホッとする。

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