夏井川渓谷の隠居の庭は「堆肥」の宝庫でもある。3・11の前は庭の落ち葉を集め、草を刈って木製の堆肥枠に投入し、分解して堆肥になるのを待った。
それだけではない。街中では公園のそばに住む人々が落ち葉をごみ袋に詰めて、燃やすごみとして出す。
知り合いの店の近くにも、毎年、落ち葉の袋が積み上げられた。「燃やすのはもったいない、堆肥にするから」と一部をもらい受け、夏井川渓谷の隠居へ運んだものだ。
隠居の庭が凍る冬場は、生ごみを堆肥枠に投入する。堆肥は発酵・分解して熱を帯びている。スコップで穴をあけるのも簡単だ。
3・11後は、庭が全面除染された。ネコの額のような菜園の土にも、汗と堆肥の蓄積がある。それがいったんチャラになった。
しかし、再び庭に種が飛んでくると、あっという間に雑草の海ができる。三春ネギの種をまき、疊3枚分くらいのうねが復活すると、イネ科のメヒシバが周りを囲むように繁茂した。
夏場、熱中症になるのを避けて草刈りを休んだら、メヒシバが伸びて1メートルくらいになった。それをフィールドカートに座り、ねじり鎌を使って根っこから引っこ抜く。
堆肥枠があったころは、この刈り草を積んでブルーシートをかけ、四隅に石を置いた。今も同じところに刈り草を積み上げている。
震災で庭の石垣が一部崩れ、雨による土砂流出を抑えるために、崩落個所にこのブルーシートをかけた。これは今もそのままになっている。
代わって、野積みの刈り草にはブルーネットをかぶせ、風で吹き飛ばされないよう、四隅に石を置いた。
あるとき、庭の刈り草がいっぱい出た。それをたまたまブルーネットの上に積み上げ、そのままにしておいた。
1年、いや2年近くたったある日、堆肥化して黒々とした刈り草をどけてブルーネットをはがそうとしたら、びくともしない。土中にのびた根がネットと堆肥にからみついている。
作業の途中、近所の家に用があって出かけた。その間はカミサンが一人でネットをはがし続けた。
用事をすませて作業に戻ると、ほどなくネットがはがれた。びっしり植物の根がネットに張りついている=写真。なんという生命力だ。
原因ははっきりしている。シートであれば光を遮るから植物は芽を出さない。ネットだったために雨も光も降り注ぎ、刈り草の種が活気づいた。
たまたまネットがあったから使っただけだが、そこに刈り草がのっかったらどうなるか、シートとは別の想像力が必要なのに、「ま、いいか」ですませてしまった。
それに、夫婦といえども土いじりや刈り草への考え方が微妙に違う。私は野菜派、カミサンは花派。刈り草も、私は散らばっていても平気だが、カミサンは片づけないと気がすまない。
そもそもカミサンがネットを取り除こうとしたのは、そこを花壇にしたかったからだ。私はそのまま堆肥づくりのスポットにしておきたいのだが……。
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