家の庭に水を張った睡蓮鉢(すいれんばち)がある。去年(2021年)の夏、カミサンがヘチマを2個ひたして、上に植木鉢を載せた。
それから半年余り――。実の外側は腐敗し、水は悪臭を放っていたが、いかにもヘチマらしい繊維状の中身が現れた。よく水洗いしたあとの姿がこれ=写真。
夏井川渓谷の隠居へ行くと、たまに上流まで足を延ばし、山を越えて直売所巡りをする。小野町・おのいちへ、平田村・道の駅ひらたへ。なかでも、三和町下市萱・ふれあい市場へはよく行く。
ときには、好間町榊小屋まで下って、ギャラリー木もれび、有機無農薬栽培の直売所・生木葉へ寄る。ヘチマは生木葉からちょうだいした。
わが家では、水にひたす昔ながらのやり方で繊維を取り出したが、今は時間短縮と悪臭対策のために煮て皮をむく、あるいは天日でカラカラにしてから皮をむく、というやり方が多いらしい。
同じウリ科の仲間であるキュウリがそうであるように、 ヘチマの未熟果も食用になる。といっても食べた記憶があるのかないのか、はっきりしない。
食べ方を調べているうちに、台湾の小籠包に出合った。小籠包の具にヘチマの未熟果が入ったものがあるのだとか。
これは知らなかった。平成21(2009)年9月、同級生と還暦を記念して海外修学旅行を始めた。2回目の翌年秋は、台湾高鐵(新幹線)に乗って南の高雄(カオション)へ行き、港から南シナ海に沈む夕日を見よう、ということになった。
台北(タイペイ)に着いた翌朝、台風が襲来した。新幹線は動かない。予定を変更して、台北市内の温泉につかり、烏来(ウーライ)・野柳(イェーリュウ)・九份(チゥフェン)と観光名所を巡った。
このとき、台北市内の料理店で小籠包を食べた。口に入れた瞬間、スープのうまみと中身がジワッと口中にとろけてひろがった。そのおいしさにただただ感動した。
それから半年後に東日本大震災が起きた。台湾から200億円以上の義援金が寄せられた。
台湾高鐵への思いと「謝謝!台湾」の気持ちが募って、平成27(2015)年2月、旧正月前の台湾を仲間と再訪した。高雄で南シナ海を見るという念願がかなった。
台湾の思い出は、となると、真っ先に小籠包が思い浮かぶ。それがへちま入りだったかどうか、今となっては確かめようがない。が、熱々の、あのスープのうまさだけは今も舌頭によみがえる。
それに、今度初めてわかったのだが、スープは蒸す前は煮凝り状態で、豚ひき肉などとともに具材としてくわえられ、蒸されることで肉汁に変わる。食に関する創意工夫と、その奥深さにあらためて感じ入ったのだった。
へちまたわしは今、二つに切られて風呂場にある。たわしというよりはスポンジだ。へちまスポンジは天然素材だから、繊維が切れてもマイクロプラスチックのように自然環境を汚染することはない。
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