庭の木もそうだが、人間の手が加わって樹形がととのったものほど、幹も根元もすっきりしている。そうすることで栄養が上部の枝葉に届く、ということらしい。
夏井川渓谷の隠居の庭に月桂樹がある。元はカミサンの実家の庭にあった。根元から伐採されたのを掘り起こし、隠居の庭に移植したら、「ひこばえ」が出てきた。
ざっと半世紀前、カミサンが実家の物置と味噌倉の北側に月桂樹の種を埋めたら発芽した。
最初は日陰の身だったが、味噌倉を移動すると光が差してぐんぐん生長した。幹の直径が根元で50センチほどになった。
15年ほど前、物置を建て替えたとき、月桂樹が切り倒された。カミサンの頼みで切り株が掘り起こされた。切り株は臼になるくらい大きい。それを夏井川渓谷の隠居に移植した。
枯れるかもしれない、そう思いながらも、日当たりのいい庭に穴を掘り、二人がかりで根っこの生えた切り株を据え、土を戻したら、翌年、根元からひこばえが伸びて葉が開いた。
それからは切り株を取り囲むように、次々とひこばえが出てくる。このままでは生長の栄養が分散される。育ちの早い2本を残して、あとは切り取るようにしている。いずれは幹を1本にしないといけないか。
月桂樹はクスノキ科の常緑樹だ。今では葉をいっぱいまとっている。葉をもむといい香りがする。葉を乾燥させたものは、フランス語で「ローリエ」、英語で「ローレル」。香辛料=料理用ハーブとして広く用いられているという。
さて、わが隠居の月桂樹と向き合ってきたからか、街路樹のひこばえや幹から出ている胴吹き枝を見ると、つい切りたくなる。
道路を管理する行政体の違いもあるのかどうか。どこがどうと、いちいち覚えてはいないが、平市街の旧国道6号では、てっぺんから根元まで緑の円柱のようになった街路樹を見た。まるで木のお化けだ。
その道路と交差する道路では、胴だけ緑、樹幹は伐採されたままの状態、という街路樹もあった。
造園業者のコラムには、剪定とは枝を切ることで形をととのえ、風通しをよくすることの総称、とある。不要枝の例として、下からひこばえ、胴吹き枝、枝葉が茂っている部分では下がり枝、絡み枝、立ち枝、逆さ枝、徒長枝などがある。
わが隠居の月桂樹は切り株から「若返り」ができたが、街の並木はどうだろう。ほほえんでいる街路樹もあれば、泣いている街路樹もある。いや、泣いたり、怒ったりしているものが多いかもしれない――そんな思いにふけるときがある
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